27、28両日の米朝首脳会談を控え、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領との直談判に交渉の進展を託そうとする北朝鮮の姿勢が鮮明になっている。
ハノイでは21日からほぼ連日、北朝鮮の金赫哲(キムヒョクチョル)対米特別代表が米国務省のビーガン北朝鮮政策特別代表と実務協議を続けている。
協議は合計で15時間を超えたが、米朝関係筋によれば、先週末までの時点で米朝実務協議に大きな進展はない。事務レベルでの調整が整わぬまま、首脳会談を迎える可能性も高まっている。
韓国・慶南大学の金根植(キムグンシク)教授は「北朝鮮は、実務協議で合意を事前に準備する形式ではなく、トランプ氏の即興的な決断に期待している」とみる。
脱北した元朝鮮労働党幹部によれば、金赫哲氏は金正恩氏直属の国務委員会の所属。正恩氏は昨秋までに核問題の担当部署を外務省から国務委員会に移したとされる。その目的についてこの元幹部は、非核化を強く求める米国務省の影響力を排除するためだと指摘。カウンターパートである外務省の権限をそぎ、信任の厚い金赫哲氏に対米交渉を任せることで「トップダウンの形を作った」と語る。
朝鮮中央通信は24日、「米国の米朝交渉反対派は沈思熟考すべきだ」との論評を伝え、北朝鮮の非核化に疑問を示す米民主党のペロシ下院議長らを名指しで批判した。しかし、北朝鮮の公式メディアは、交渉の行方を握るトランプ氏への批判を慎重に避けている。(ソウル=牧野愛博、ハノイ=武田肇)
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