韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は1日、日本統治下の朝鮮半島で1919年に起きた「3・1独立運動」から100年を記念したソウルでの式典で演説した。「歴史を鏡とし」と訴え、日韓の協力を呼びかけた。元徴用工を巡る判決や慰安婦問題などの懸案には直接言及せず、外交摩擦を避ける姿勢を示した。解決に向けた具体的な方策には触れなかった。
文氏は、日本が独立運動を鎮圧した際に多数の死傷者が出たことを、「蛮行」や「虐殺」といった言葉で紹介。「親日残滓(ざんし)の清算はあまりに長く先送りされた宿題だ」と語った。韓国で「親日」とは、日本の統治に積極的に協力した人たちを指す言葉だ。
一方で、「隣国と外交で葛藤要因を作ろうということではない。親日残滓の清算も外交も未来志向で進むべきだ」と述べ、日本に謝罪を求める考えがないことを明らかにした。「親日は反省すべきであり、独立運動は礼遇されなければならないという価値を定めることだ」と説明した。
文氏は「左右(陣営)の敵対は、日帝が民族を分裂させるために使った。我々が一日も早く清算すべき代表的な親日残滓だ」とも主張した。文政権が進める「積弊(チョクペ)(積み重なった旧来の弊害)清算」政策の影響で、保守と革新両勢力の対立が激化している状況を意識した発言とみられる。
文氏は「力を合わせ、被害者の苦痛を実質的に癒やすとき、韓国と日本は心を通じた本当の友達になるだろう」とも述べた。最近の懸案となっている元徴用工や元慰安婦らを念頭に置いた発言とみられる。
一方、文氏は新しい100年の指標として、南北統一を準備する「新韓(朝鮮)半島体制」を提唱した。南北関係を改善するため、中断している金剛山(クムガンサン)観光と開城(ケソン)工業団地の再開について米国と協議する考えを表明した。北朝鮮の非核化が進展した場合、南北の経済協力を実現させる経済共同委員会を作る考えも示した。
文氏は演説で、2月末のハノイでの米朝首脳会談について、「意味のある進展」「重要な成果」と述べた。会談で合意は達成できなかったが、北朝鮮の非核化は文政権の最重要課題である南北関係改善の前提でもあり、会談の取り組み自体を評価した。
文氏は「南北関係発展は米朝関係正常化、日朝関係正常化と結びつく。韓半島平和のため日本との協力も強化する」と訴えた。ただ、南北関係が進展しない限り、対日関係に集中する余裕は生まれないとの見方が出ている。
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