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戦後日本の絵本づくりを牽引(けんいん)した福音館書店相談役の松居直さん(92)は、中国でも精力的に絵本の魅力を伝え続けてきました。「絵本を読んだら、何の役に立つのか」。当時、中国でなじみのなかった絵本にそんな疑問の声があがったといいます。松居さんはどのように答えたのでしょうか。そして、中国への思いとは――。(中村靖三郎)
「じかに聞く体験貧しくなった」 福音館元編集者が警鐘
「1980年代以降、松居さんは毎年のように中国を訪れ、絵本の普及活動をしてきた」。福音館書店の元編集者で、現在は中国の出版社で編集長を務める唐亜明さん(65)は語る。松居さんに誘われて来日し、83年に福音館書店に入社。以来、中国各地で講演する松居さんに通訳として同行した。辺鄙(へんぴ)な地域もいとわず、現地の編集者や出版関係者らに「絵本とは何か」を宣教師のように説いて回った。
松居直さん(左)との再会を喜ぶ国際児童図書評議会の張明舟会長(右)。中央は唐亜明さん=東京都内の松居さんの自宅
当時の中国には、子ども向けに簡易な絵入りのペーパーバックの本はあったが、印刷の質が悪く、ハードカバーで、きれいな絵と文がある「絵本」はほとんどなかったという。
中国の人が初めて絵本を目にしたとき、唐さんは「みんな三つのことを不思議に思った」と語る。
なぜ字が少ないのか▽なぜ子ど…