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巻頭言で「これは あなたの手帖(てちょう)です」と呼びかけてきた「暮しの手帖」が創刊70年を経て今月が98号。5月に「4回目」の100号を迎える。100号ごとに1号から始めるのは、「初心に立ち返る」という初代編集長・花森安治さんの考えで、平成最後の春は現編集部の節目になる。足元から暮らしを見つめる雑誌は、いま何を伝えようとしているのか。編集長の澤田康彦さん(61)に聞いた。
向き合うのは「読者だけ」
澤田さんは、2015年秋に編集長を引き継いだ。マガジンハウスの編集者時代に「ブルータス」「ターザン」などライフスタイル誌を手がけたが、広告を取らず、長年の愛読者を持つ「暮しの手帖」のかじ取りはまるで違う世界。「おそるおそる進んできた」という。
「読者とだけ向き合って毎号を作る。忖度(そんたく)する相手のない自由度と、現在の20万部から読者が減っていけば雑誌も会社も続けられない厳しさの両方があります。いかに『伝える』プロたるか、あらためて意識するようになりました」
1月25日発売の「暮しの手帖」2-3月号では「じゃがいも版画教室」などの特集も
構成は、衣食住の実用や読者投稿など創刊以来の路線。ただし、今の読者は今を生きている。澤田さんは、20人ほどの編集部員が自分の暮らしから気づくものを、企画の出発点にする方針にした。身の回りの「ていねいさ」への憧れと、目の前の「忙しさ」への助け。二つの方向性を打ち出している。仕事ぶりはエッセー「ばら色の京都 あま色の東京 『暮しの手帖』新編集長、大いにあわてる」(PHP研究所)にまとめた。
例えば料理なら、クリスマスは丸ごと一羽のローストチキンに腕まくりするが、普段の食卓には野菜1種類でできるおつまみを提案する、といった具合だ。掲載するレシピは、編集部のキッチンで全て検証しているが、澤田さんは「試作室から」というページを作り、その様子も記事にした。レシピの生みの親である料理研究家にも来てもらう。
後半では、読者とともに学ぶ編集部の姿勢や、「一人ひとりが自分の暮らしを大切にすれば、二度と戦争をしない世の中にできる」という創業者たちの哲学を受け継ぐ取り組みについて聞きました
「『読者とともに学ぶ』という…