2018年度朝日賞と第45回大佛(おさらぎ)次郎賞、第18回大佛次郎論壇賞、18年度朝日スポーツ賞の贈呈式が30日、東京都千代田区の帝国ホテルで開かれた。大佛次郎賞に選ばれた角幡唯介さんは、受賞作の『極夜行』で描いたグリーンランドの北極圏で犬ぞり訓練中のため、欠席。「人間の社会システムの外側に飛び出し、未知の世界を探りたい」とビデオメッセージを寄せた。
授賞式に出席したかったのですが、現在、また(『極夜行』で描いた)グリーンランドのシオラパルクで犬ぞりの訓練をしています。
『極夜行』は、太陽が昇らない、夜がずっと続く冬の北極を舞台にした探検の本です。なぜ私が「極夜」の世界に行きたかったのか。それは、今の時代はもう「地図の空白部」という意味では探検ができなくなっていて、地理的な空白ではなく、人間の社会システムの外側に飛び出し、別の未知の世界を探りたいという気持ちがあったからです。「極夜」はまさに想像できない世界、行ってみたいという気持ちが非常に強くなりました。
4年間という長い時間をかけて準備し、80日間旅をして、最後に太陽が昇ったのを見た時はものすごく感動しました。非常に劇的でして……。普通はできない旅ができたという「行動」に関しての手応えがありましたし、それを「文章表現」としてまとめることができたという手応えのある作品になりました。
受賞の連絡をいただいた時は本当にうれしかったです。このたびは、どうもありがとうございました。
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かくはた・ゆうすけ 受賞作『極夜行』。本作で本屋大賞ノンフィクション本大賞も受賞