批評家の東浩紀さんと書評家の大森望さんが東京・五反田のゲンロンカフェで始めた「ゲンロンSF創作講座」。その受講生だった櫻木(さくらき)みわさんが、単行本「うつくしい繭」(講談社)で作家デビューした。東ティモールやラオスなど、アジアが舞台の四つの物語を収めた短編集だ。
表題作は、ラオスの奥地にある辺鄙(へんぴ)な村で、選ばれたゲストたちに秘密の〈トリートメント〉をほどこす施設を描く。その心臓部は〈コクーン・ルーム〉と呼ばれ、薬草の香りに包まれた部屋にカプセル型の機械が置かれていた。そこでゲストたちはどんな体験をするのか。物語は、施設で働くことになった日本人女性の視点でつづられる。
各編にはSF的な設定や小道具を用いているが、講座を受けるまでSFの素養は「まったくなかった」と明かす。毎月テーマに沿った作品の梗概(こうがい)=あらすじ=を書くカリキュラムのなかで、「無理やりだったんだけれども、そのことで物語を飛躍させてもらった。翼をもらった感じです」と話す。
かつて炭鉱で栄えた福岡県の筑…