第77期将棋名人戦・C級1組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の最終11回戦が5日、東京と大阪の将棋会館で一斉に指されている。昇級の可能性がある5人のうち、高校生棋士の藤井聡太(そうた)七段(16)は大阪市福島区の関西将棋会館で都成竜馬(となりりゅうま)五段(29)と、師匠の杉本昌隆八段(50)は東京都渋谷区の将棋会館で千葉幸生(さきお)七段(40)と対局中で、藤井七段や杉本八段らを中心に昇級の行方が注目される。
藤井聡太 名人への道
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対局は午前10時に始まり、持ち時間は各6時間。終局は深夜になる見通し。
名人になるには、順位戦でC級2組→C級1組→B級2組→B級1組→A級と、4回昇級を重ね、最上位のA級で優勝して名人挑戦者になり、名人との七番勝負に勝たねばならない。順位戦は例年、6月から翌年3月にかけて指される長丁場のリーグ戦。昇級を逃すと、同じクラスで、もう一年、昇級を目指してリーグ戦を戦うことになる。
今期C級1組には39人が参加。それぞれ10局指し、昇級できるのは上位2人だけだ。昇級の可能性があるのは藤井七段と杉本八段ら8勝1敗の4人と、7勝2敗で順位が高い1人。一番手は近藤誠也五段(22)=8勝1敗、順位6位、二番手は杉本八段=8勝1敗、同7位、三番手は船江恒平六段(31)=8勝1敗、同14位、四番手は藤井七段=8勝1敗、同31位、五番手は高崎一生(たかざきいっせい)六段(32)=7勝2敗、4位。近藤五段と杉本八段は、自分が勝ちさえすれば昇級できる、いわゆる「自力」。他の3人は「他力」だ。
藤井七段はデビュー後、初参加した2017年度のC級2組順位戦で10連勝してC級1組への昇級を決めた。2期連続昇級を目指すが、負けた時点で昇級の可能性が消える。たとえ勝っても、勝ち星が同じ場合は(前期の成績などに基づいて決まる)今期順位が上の棋士が優先されるルールのため、自分より上位の競争相手3人のうち杉本八段ら2人が勝つと昇級できない。
ただし、師弟同時昇級の可能性も残っている。杉本八段と藤井七段が勝ち、近藤五段と船江六段が負けた場合だ。順位戦で師弟そろっての昇級が実現すれば、1986年度の第45期B級2組順位戦で師匠の大内延介(のぶゆき)九段(故人)と弟子の塚田泰明(つかだやすあき)九段(54)がそろってB級1組に昇級して以来、32年ぶりの快挙だ。
2月5日にあった10回戦で杉本八段と藤井七段が共に勝てば、師弟同時昇級が決まっていたが、2人とも敗れ、実現しなかった。一度逃したチャンスを師弟が、つかみ直すことが出来るかどうか注目される。
昇級候補の5棋士の対戦カードを見ると、いずれも強敵、難敵ぞろい。例えば、藤井七段の対戦相手の都成五段は関西の若手俊英。杉本八段の相手の千葉七段は関東の実力者。誰が昇級するか、予想はつきにくい。
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成績上位4人の対局を速報する大盤解説会が5日午後6時から大阪市福島区の関西将棋会館道場(06・6451・0220)である。午前10時から整理券が配られる予定。解説は北浜健介八段(43)と室田伊緒女流二段(29)。室田女流二段は杉本八段門下で、藤井七段の姉弟子にあたる。料金は一般2千円など。(佐藤圭司)