長崎県五島市の障害者支援施設「五島育成園」の職員が、2014年に入所者の頭を茶わんで殴りけがを負わせたのに、病院で「自分で壁にぶつけた」などとうその説明をしていたことがわかった。県は当時、職員の行為を虐待と認め、障害者総合支援法に基づき施設に改善勧告をしたが、公表はしていなかった。
五島育成園によると、14年6月9日、知的障害のある入所者の40代男性がお茶を飲もうとした際、50代の男性職員が医師から指示された1日分の量より多いことを注意し、取り上げた茶わんで男性の頭を殴って出血させた。その後、男性を市内の病院に連れて行き、医師や看護師に「つまずいて壁にぶつけた」などとうその説明をしたという。
施設側は同日、男性の保護者に謝罪。後日、病院に診断書の作成を依頼した際、内容が事実と異なったため職員から聞き取りなどを行い、10日後に五島市に連絡したという。職員は同月末に依願退職した。
海端隆弘副施設長は「職員への聞き取りなどで市への報告が遅れた。うその説明により対応が遅れてしまい、申し訳ない」と話した。警察に通報しなかった理由については「保護者が納得し、被害届を出さないと言ったため」と説明した。
長崎県監査指導課の担当者は「施設が改善勧告に従ったため、公表はしなかった」と説明している。(弓長理佳)