23日に開幕する第91回選抜高校野球には、21世紀枠で選ばれた3校が初出場する。熊本西は、日常から野球に対する意識を高めてコツコツと力をつけ、甲子園にたどりついた。
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全選手が軟式出身
グラウンド周辺は田畑。作物の生育に差し支えるため、照明が設置できない。熊本西の練習は掛け値なしに暗くなれば終わる。普通科に体育コースがあるが、野球は受験種目外で恩恵はない。21世紀枠で選ばれた県立校。全39選手が軟式出身だ。
練習では会話が多い。連係ミスがあれば確認。「意見しあうと相手のことが分かり、思いやりのあるプレーができるようになる。そうしてみんなレベルを上げてきた」と、遊撃手の浦田健太郎(2年)は言った。
就任3年目の横手文彦監督(43)は、ぼーっと野球をしないように仕向けてきた。ノックでは「内野は4秒」などと捕手が指示。捕球して送球が一塁に達するまでの目標秒数だ。マネジャーがタイムを計り、マイクで知らせる。様々な班活動もそう。ホワイトボードに天気掌握班による数日先の予報が書かれる。選手は雨を見越し、日によっては練習時間を少しでも延ばす。最近は栄養管理班から花粉症を予防する食材が示された。
「甲子園というからには自分も一流に触れねば」。監督自身、各地の強豪校を見学した。横浜(神奈川)をアポなしで訪ねたことも。全国制覇した県立の佐賀北の練習方法も採り入れた。そこからくみ取った公立の気構えは「できることを最大限にやる」。昨秋の九州大会。8強入りを決めた試合の3得点は、2犠飛と重盗を狙った際の敵失によるもの。泥臭く勝った。
悲しみ胸に2勝が目標
各自がテーマを選んで発表する課題研究にも取り組む。技術、体力強化のお題が並ぶ中、二塁手の久連松(くれまつ)祐也(2年)は「甲子園の魔物とは」。本を読み、甲子園の逆転試合を検証した結果、「魔物などいない。試合には日常がそのまま出る。平常心が大切です」。
昨年11月、練習試合で仲間が死球を受けて亡くなる事故があった。悲しみを胸に納め、今は前を向けている。夏の甲子園には34年前に出て、1勝した。だからこの春は2勝が目標だ。(隈部康弘)