山名酒造の蔵人たち。中央は杜氏の青木卓夫さん=2019年1月23日午前、兵庫県丹波市、金居達朗撮影
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「季節杜氏(とうじ)」は、農業のかたわら日本酒造りに従事する職人たちだ。稲刈りが終わると酒蔵に泊まり込み、田植えの時期には故郷に戻る。そんな杜氏たちが今、姿を消しつつある。家族のかたちや働き方の変化は、酒造りの世界にも変化を迫っている。
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冬の凜(りん)とした空気に満たされた未明の酒蔵。プチプチ、プチプチと泡のはじける音が、絶え間なく響く。タンクの中でもろみが発酵し、炭酸ガスが発生しているのだ。
蒸し上がった酒米に糀(こうじ)菌を振りかける杜氏の青木卓夫さん。糀菌を振りかけるのは杜氏にしか許されないという=2019年1月23日午前、兵庫県丹波市、金居達朗撮影
「ようしゃべっとるな。元気な証拠や」
兵庫県丹波市の山名酒造の酒蔵で、青木卓夫さん(69)が顔をほころばせた。300年以上続く老舗で2008年から、酒造りの指揮を執る、杜氏を務めている。
地元の農家で生まれ育ち、高校卒業後、山名とは別の酒造会社に就職した。水戸市の酒蔵に修業に出るなどしたあと、30歳の若さで杜氏に起用された。以来、一時期大手酒造会社に請われて地元を離れたものの、長い間、地元で「丹波杜氏」として活躍を続ける。
早朝の作業が一段落すると、杜氏の青木卓夫さんは朝食前に必ず神棚に手を合わせるという=2019年1月23日午前、兵庫県丹波市、金居達朗撮影
一方で青木さんは、実家の米作農業も継いでいる。杜氏としての活動は、毎年10月から翌年4月ごろまでだ。酒蔵に寝泊まりし、車で10分ほどの自宅に帰ることはほとんど無い。年末年始も他の職人を休ませて、一人で蔵に泊まり込む。今年も自宅に帰ったのは1月3日。青木さんは、「慣れたら苦労とは思わん」。
麴室から出した麴を乾かす青木貞夫さん。ゆっくりと温度を下げ、水分を飛ばすことで発酵を止めていく=2019年1月23日午前、兵庫県丹波市、金居達朗撮影
山名では、青木さんを含めて4人が、冬の間だけ働くスタイルを貫いている。山名洋一朗専務は、「丹波の酒造りの文化だ。何とか昔ながらの酒造りを続けたいのだが」。
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