英国の欧州連合(EU)からの離脱をめぐり、12~14日の英議会下院で一連の重要採決が予定されている。12日には離脱協定案が再び否決される見通しだが、13日の採決で混乱を生む「合意なき離脱」を回避し、14日に離脱延期が可決される公算が大きい。
英とEU、新たな合意文書 英議会の支持狙って双方知恵
ブレグジットとは? もっと詳しく知る記事、5本ナビ
「否決されたら、離脱できなくなるかもしれない」。メイ首相は8日の演説で、身内なのに協定案に反発し続ける与党・保守党の強硬離脱派を牽制(けんせい)した。
だが強硬派がひるむ様子はない。英メディアによると、1月の協定案採決で反対に回った保守党議員の多くは、12日の採決で再び反対する見通しだ。メイ政権内では、党内の反発を抑えて大敗を避けるため、メイ氏は辞任を約束すべきだとの意見が出ている。また、12日の採決の意味合いを、協定の批准につながる採決から、議会の意向を聞くだけで法的拘束力がないものに変更する案も浮上しているという。メイ氏自身はEUに協定案を修正してもらった上で12日の可決をめざす道を諦めず、11日夕にも仏ストラスブールでEUのユンケル欧州委員長と会談する見通しだ。
協定案が否決され、英議会が離脱延期を求めても、21、22日のEU首脳会議(サミット)でEU側の同意が得られるまで安心できない。29日の離脱予定日まで、先行きが見えない状態はまだ続きそうだ。
離脱協定案は昨年11月にメイ政権とEUが合意した。だが英国がEUの関税ルールに従い続ける「非常措置」が盛り込まれたため、強硬離脱派が「永久にEUに縛られる」などと反発してきた。
メイ氏は当初12月の予定だった採決を延期し、説得に当たったが、1月の採決では保守党から118人が造反し、全体で230の歴史的大差で否決された。その後、「非常措置を代替策に置き換えれば英議会は協定案に賛成する」との動議が可決され、メイ氏は協定案の修正を目指してきたが、EU側は応じてこなかった。
離脱協定が発効しないと、これまで統一されていた関税や貿易ルール、事業の許認可や免許などが3月末の離脱とともに英国とEUで別々になり、社会の混乱が予想されている。(ロンドン=下司佳代子)