海外経済の減速に引きずられ、国内の景気が腰折れすることに日本銀行が警戒を強めている。日銀は15日の金融政策決定会合で政策の「現状維持」を決定。景気の基調判断も「緩やかに拡大している」と変えなかったが、輸出や生産で影響が出ていることに懸念をにじませた。
日銀は景気の全体的な見方は維持したが、個別の項目では「弱気」な表現をあちこちにちりばめた。
海外経済は中国や欧州の状況をふまえ、「減速の動きがみられる」との表現を加えた。「増加基調にある」としてきた輸出と生産の判断は「足もとでは弱めの動きとなっている」と明確に下方に引き下げた。
それでも黒田東彦(はるひこ)総裁は会見で「海外経済がさらにどんどん下ぶれする可能性は非常に薄いのではないか。年後半には、減速している中国や欧州は回復していくのがメインシナリオ」と強気だった。輸出減少の主要因だった中国経済については「(中国政府の)かなり大幅な景気対策がすでに決定し、実行されつつある」と回復に期待した。
一方、民間エコノミストは海外経済への懸念を強めている。中国に関しては「過剰債務などを恐れ、即効性のある政策は期待できない」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)との見方もある。すでに米欧の中央銀行は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを休止。欧州中央銀行(ECB)が年内利上げを断念し、金融引き締めから緩和方向に軸足を移している。
日銀が4月1日に公表する全国企業短期経済観測調査(短観)では企業の景気への最新の見方が示される。市場では短観を踏まえた日銀の政策姿勢に注目が集まる。SMBC日興証券の牧野潤一氏は、今回の日銀の景気判断は「現段階では明確に判断できないとしたが、どうみても(実質的な)景気の下方修正」とし、景気動向次第では「将来の政策変更につながる可能性もある」とみる。
物価上昇率2% 麻生氏「柔軟に」
日本銀行が目指す「物価上昇率2%」を巡り、麻生太郎財務相が15日午前の閣議後会見で、「2%という話にこだわり過ぎると、おかしくなるというのは考えなくてはいけない」と発言した。麻生氏は12日の国会質疑でも「(日銀は)少し考え方を柔軟にやってもおかしくないのではないか」と述べた。日銀は早期の2%達成を目指して強力な金融緩和を続け、最近は超低金利による銀行経営悪化の副作用も目立っている。
一方、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は15日午後の金融政策決定会合後の会見で、麻生氏の発言について問われ「目標は政策委員会が自ら決定したもので、実現していくことが必要だ」と述べ、従来通り2%達成を目指す意向を示した。ただ、「2%に上がりさえすればよいわけではない」とし、副作用なども「総合的に勘案」した上で目指すとした。(湯地正裕)