東芝の巨額損失や日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の事件などで、コーポレートガバナンス(企業統治)が問われています。早稲田大学法学部の上村達男教授(70)は「会社法に人間復興を」と、人間を中心に据えた会社観を唱えています。今春で退職する上村教授に聞きました。
――「市場とデモクラシー(民主主義)の調和」という主張をしてきました。
「株式には財産権と議決権がある。財産権は金銭的な価値で、議決権がデモクラシーにかかわる。例えば、株主総会で株主が質問するときは原則1人1問。これは参政権と同じように人格権ととらえているからだ。ところが、議決権は持ち株数で決まる。会社法は市場とデモクラシーの調和を考えてきた歴史であり、今後も考えていくべきテーマだ」
――具体的な事例で言えばどういうことでしょう。
「日産の事件で言えば、3年前にルノーでゴーン前会長の報酬議案が『否決』されたことに注目すべきだ。ルノーの株主構成は、仏政府が15%、個人が63%。ファンドが少ないのは、2年以上保有していないと、2倍の議決権にならないという制度があるためで、まっとうな株主構成を実現している。学ぶべき点だ」
――ファンドには問題がある、と。
「一昨年、東芝が上場廃止を防…