(29日、プロ野球開幕戦 広島5-0巨人)
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広島ファンが待ち望んだ場面は八回1死一、二塁で訪れた。リードは1点。大瀬良はカウント1ボール2ストライクから外角低めへ142キロ直球をズドン。昨季までの同僚だった丸にバットを出させず、三振。
ファンは第1打席こそ拍手で丸を迎えたが、大瀬良が打ち取ることを願っていた。1球ごとに赤い歓声が地鳴りのように響く。大瀬良は「これで打たれたらどうなるのかなと思ったけど、力になった」。最大のピンチを、最高の結末で切り抜けた。
この日はカットボールがさえた。8回を投げて11三振を奪い、無失点。丸との4打席の対戦も、全て三振に仕留めた。第1、2打席はそのカットを使い、第3打席はほとんど投げなかったカーブで空振り三振。的を絞らせなかった。「お世話になった先輩だったので抑えることが恩返しの一つと思って投げた」と大瀬良。丸は「いい球を投げていた。次はしっかり考えをまとめて対戦できれば」。
昨季のチーム防御率は4・12で、最下位の阪神より悪かった。強力打線で球団史上初の3連覇を達成したが、2年連続リーグMVPの丸が抜け、最多勝と勝率1位に輝いた大瀬良にかかる期待はより大きなものになる。初の開幕投手を任せた緒方監督は、「今日は(大瀬良)大地の投球に尽きる。いろんな意味で重圧がかかる中、言うことがない」と満点の評価をした。
エースになる――。27歳の気概が十分に伝わる124球だった。(藤田絢子)