全国屈指の右腕・奥川恭伸投手(3年)を擁し、第91回選抜高校野球大会で優勝候補と目された星稜。昨夏の甲子園での悪夢のサヨナラ負けの悔しさを胸に大会に挑んだが、結果は2回戦負け。早すぎる敗退となったが、選抜の戦いから何が見えたのか。
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大きな収穫は、奥川投手が大舞台で本領を発揮したことだ。開幕日の1回戦は最速151キロの直球に落差のある変化球を織り交ぜて、履正社(大阪)の強力打線から17三振を奪い、被安打3で完封。3―0で見事な勝利だった。奥川投手が約4万人の観衆の前で見せた圧巻の投球は「100点の出来栄え」(林和成監督)で、途中降板した昨夏の雪辱を果たした。
エースの確かな成長を見られたからこそ、28日の習志野(千葉)戦は残念だった。本調子ではなくても粘り強く投げ続け、10三振を奪った奥川投手。しかし、打線は先制点はあげたが、下手投げ投手から140キロ台の速球を投げ込む本格派投手への継投策に封じ込まれた。昨夏の甲子園を経験したトップバッターの東海林航介選手(3年)と、4番に座る内山壮真選手(2年)はともに無安打。相手スタンドの吹奏楽による大音量の演奏にベンチの声がかき消され、焦りが出たのは否めない。守備にもほころびが出て、エースを援護できず1―3で逆転負けを喫した。
ただ、昨秋からレギュラー入りした選手が活躍したのは明るい材料だ。履正社の左腕投手から貴重な追加点をもぎとる左前適時打を放った知田爽汰(そうた)選手(2年)、習志野戦で先制の適時打を中前に運んだ岡田大響(ひびき)選手(3年)、2試合とも長打を放った有松和輝選手(3年)。秋はケガに苦しんだ山瀬慎之助主将(3年)も履正社戦で先制適時打を放ち、復調の兆しが見えた。彼らのさらなる成長による刺激が、チームの最大の課題である打線強化へのカギとなるだろう。
「全国制覇」の夢は持ち越された。新元号で迎えるこの夏、選手たちの最高の笑顔を見たい。(木佐貫将司)