(28日、選抜高校野球 習志野3-1星稜)
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星稜(石川)の捕手で主将の山瀬慎之助君(3年)は、150キロ超の速球を持つ大会屈指の右腕奥川恭伸(やすのぶ)君(3年)の球を小学生の頃から受けてきた。チームは優勝候補の一角に挙げられたが、県勢が成し遂げていない「日本一」という宿題は夏に持ち越された。
同点で迎えた七回。奥川君が投じた105球目は三塁線へはじき返され、勝ち越しを許す。大音量の演奏で沸く習志野(千葉)の応援席。ベンチからの声もかき消される。山瀬君はマウンドでぽんと奥川君のお尻をたたいて言った。「気にするな。抑えられるから」。だが、想定外の接戦に焦りは解消できないままだった。
二人は小4からバッテリーを組む。投手も目指していた山瀬君にとって奥川君は「相棒でありライバル」と言える存在だったが、球を受け続けているうちに気づいた。「ヤスの球は他の人と全然違う。こいつを支えて、日本一の捕手になる」
中3では軟式野球の全国大会で優勝。その年末、山瀬君は奥川君と、お互いの家族が集まった場で打ち明けた。「二人で星稜に行って全国制覇したい」。二人で何度も話しあって決めたことだった。
希望通り進学し、山瀬君は強肩を買われて1年秋から正捕手に。昨夏の全国選手権2回戦でのサヨナラ負け後、林和成監督に「部内一の練習量」を認められ主将に就いた。後輩に厳しく注意するのも苦手だが、それでも全国制覇と大きな目標をあえて口にし続け、チームを引っ張ってきた。
奥川君が全国的な注目を集めることに「ヤスばかり注目されて正直悔しい」と思ったことも。練習に力が入りすぎ、昨秋は右手を痛めて治療に専念。約3カ月間バットを振れなかったが、下半身や体幹を鍛えて春に備えた。
自身3季連続の甲子園となった今大会。1回戦は先制打を放って奥川君を援護し、守りでは二人で17三振を奪った。前評判通りの結果を示してバッテリーの評価は高まった。しかし、この日は奥川君の制球を修正できずに終わった。
「どんな相手でも対応できるバッテリーになる。二人で成長していきたい」と奥川君が言えば、山瀬君は「全国制覇するために必要なことを真剣に考えたい」。悲願達成に向け、さらに妥協なく高め合うつもりだ。(木佐貫将司)