第91回選抜高校野球大会は23日、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕した。3季連続の甲子園出場で石川県勢初の優勝を目指す星稜の投手陣は奥川恭伸、寺沢孝多、寺西成騎、荻原吟哉の4人。エース奥川は最速150キロの速球で全国から注目されるが、他の3投手も「それぞれセールスポイントがあり、仕上がりもいい」(監督の林和成)。4投手の原点にあるのは、昨夏の甲子園での済美(愛媛)戦のサヨナラ負けだ。
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四回、相手打線を1点に抑えていた右腕奥川が脚のけいれんで途中降板。「普段入らないところに力が入った。最後まで投げきれず悔しかった」。そこから継投が始まった。相手打線につかまり、八回途中から右腕寺西が登板。失点は許したものの「全力で投げることしか頭になく、一番調子は良かった」と甲子園での投球に手応えをつかんだ。
同点の九回、左腕寺沢が登板。延長十三回に持ち込む力投をみせたが、逆転サヨナラ満塁本塁打を喫した。右翼ポールを直撃した打球を目で追った寺沢は「甲子園で一番悔しい思いをしたのは、多分僕だと思います」。一方、右腕荻原は石川大会はベンチ入りしていたが、甲子園ではメンバーを外れ、打撃投手を務めた。「あの悔しさが、今の原動力」という。
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あの夏の悔しさを胸に、4投手はそれぞれ体づくりやフォームの改造などに汗を流してきた。
奥川は「口に含むものから意識した」と食生活から見直し、秋の北信越大会決勝では延長十五回183球を投げ切った。「奥川に匹敵する投手になる」と意気込む寺沢は、肩まわりの筋力や体幹を中心にトレーニング。北信越決勝の再試合では先発を任された。
同じ学年の寺西と荻原はお互いを意識する仲。寺西は体重を5キロ増やし、体重を投球に乗せるフォームを模索する。一方、明治神宮大会決勝で先発し、六回まで無失点に抑えた荻原は「フォームは変えず、主に下半身を鍛えている」。
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今月9日、今季初の対外試合で小松と2試合を戦った。
1試合目の先発は奥川。プロ球団のスカウトが見つめるなか、140キロ台後半の直球を中心に3回を投げて1失点。「指のかかりが悪くて本調子ではないが、去年の春よりはいい。実戦に向けてならしていく」。一方、継投した寺沢は2本塁打を許し、七回に登板した寺西も本塁打を浴びた。
好投をみせたのは、2試合目に先発した荻原だった。得意のスライダーを中心に3回を投げ、この日は4投手で唯一、無失点。荻原は自信をみせる。
「奥川さんがいつ崩れても大丈夫なよう、いつでも準備はできています」