医療や介護、年金などの社会保障費を抑制するための改革案を財務省がまとめ、23日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会に示した。給付の抑制や負担の公平化が柱で、審議会の議論を経て、政府の社会保障改革案への反映を目指す。
社会保障費は政府の歳出の約3分の1を占め、今後も高齢化に伴って給付が膨らむことは避けられない。2022年以降は人口に占める割合が多い「団塊の世代」が75歳以上になり、医療費や介護費の増加が加速する見込みだ。価格の高い新薬が相次いで登場していることも、医療費を押し上げる要因となる。
財務省は、このままでは制度を支えられなくなるとして、各分野ごとに「給付と負担のバランス」を見直す案を示した。医療保険や介護保険では、給付範囲を抑えて利用者の自己負担を増やすことや、提供するサービスの効率化などを提案。年金では、70歳を超えて「繰り下げ受給」を選べるようにすることや、高齢者が働きながら受け取ると減額されることもある「在職老齢年金」を見直す場合の課題などを盛り込んだ。繰り下げ受給は安倍晋三首相が導入を表明している。
政府は、年金と介護は年末、医療は来年6月をめどに改革案をまとめ、それぞれ20年、21年の通常国会に必要な法案を提出する方針だ。会合後に会見した分科会長代理の増田寛也元総務相は「委員から方向性に異論はなかった。制度が沈んで困るのは国民。分かりやすく伝えて理解を得ることが必要だ」と述べた。(木村和規)
財務省が示した主な社会保障改革の方向性
●医療・介護
【保険給付範囲のあり方】
・処方なしで買える医薬品を処方した際の自己負担率引き上げ
・少額の外来受診への定額負担導入
・高度・高額な医療技術や医薬品への対応
・軽度な要介護者への生活援助サービスの効率化
【保険給付の効率的な提供】
・病床を削減するための都道府県の権限を強める
・診療報酬、薬価の合理化・適正化
【高齢化・人口減少下での負担公平化】
・後期高齢者の窓口負担引き上げ
・居宅サービスでケアプランを作る際の利用者負担の導入
●年金
・在職老齢年金制度と高所得者への給付の見直し
・繰り下げ受給の上限年齢を現在の70歳から引き上げる