4月のインドネシア大統領選の投開票作業スタッフらが過労などで死亡した問題で、選挙管理委員会は3日、同日までに亡くなった人が計382人に上ったと発表した。政府は同日、犠牲者1人あたり3600万ルピア(約28万円)の見舞金の支払いを始めた。
大統領選は、国会や地方議会など四つの選挙と同じ日に投開票された。手作業による集計などの仕事が早朝から翌朝まで続き、臨時で雇われた市民のスタッフらが相次いで疲労を訴えたり、過労死したりした。
選管によると、総選挙監視庁職員92人、警察官22人も過労が原因で死亡した。病気になったスタッフ3538人にも、症状に応じて見舞金が支払われる。2014年の総選挙でもスタッフ140人以上が死亡したことも明らかになった。
アリフ選管委員長は3日、ジャカルタ西部で開票所の責任者を務め、急逝した男性(60)宅を訪問した。「多大な貢献に感謝し、お悔やみ申し上げる」と語り、遺族に見舞金を手渡した。男性の母親(83)は何も語らず、目頭を押さえた。
男性は、投開票の4日前から、投票に必要な登録証を戸別に配ったり、投票所の設営をしたりした。投開票前日の4月16日、訪問先で突然意識を失って心不全で死亡。医師は「疲労が原因」と家族に説明した。
アリフ氏は、市民のスタッフ全員が事前に診察を受けて健康上の問題はなかったとする一方、「作業は開票日に限らず、前後にもあり、心身ともに大きな負担があった」と説明した。
男性の次男(18)は「父のような犠牲者を二度と生まないよう、選挙制度を改善してほしい」と訴えた。(ジャカルタ=野上英文)