プロの裁判官だけが行っていた刑事裁判の審理に、市民が加わるという歴史的な転換から10年。裁判員経験者は約9万人に上る。748人のアンケート回答からは、時間が経ったからこそ見える成果と課題が浮き彫りになった。(北沢拓也、阿部峻介)
裁判員制度「市民と裁判官、感覚違う」 経験者の46%
裁判員制度の目的には、刑事裁判に市民感覚を反映することと併せ、司法をより身近にすることが挙げられている。今回のアンケートで、「裁判官時代と比べ、刑事裁判は身近なものになったと感じるか」という質問には70%が「感じる」と答え、「感じない」は21%にとどまった。
看護師の50代女性は広島地裁で殺人事件を担当し、「裁判員一人一人が自分の意見を出し合い、量刑を決めた」と振り返る。判決後は「事件に関するニュースに目を向け、背景も考えるようになった」という。小学校教諭の40代女性(東京地裁)は「子どもたちを育てる仕事にプラスに働いている」と答えた。
市民感覚については構造的な課題が残る。裁判員が加わるのは一審だけのため、そこで出た結論が確定するとは限らず、弁護側や検察側が不服として控訴した結果、プロの裁判官だけの判断で覆るケースもある。こうした例についてアンケートで「適切ではない」と答えたのは42%。東京地裁で覚醒剤の密輸事件に携わったパートの40代女性は「自分の費やした時間、労力は何だったのか。ただ市民の意見を聞くためだったように感じるだろう」と述べた。
一方、「分からない」という人が36%、「適切だ」も23%いた。アクセサリー製造の70代男性(東京地裁、殺人未遂事件)は「覆るのは構わない」としながら、「市民感覚を反映させるのが目的なら、上級審にも市民を参加させるべきでは」と提言し、少なくとも控訴があった場合は「裁判員にも知らせてほしい」と求めた。
除外すべき事件、最多は「死刑が想定される事件」
裁判員裁判の対象になるのは「…