米政府による対中関税引き上げの発動を前に、米中高官による通商協議が9日開かれた。米ホワイトハウスは同日夜、10日朝も協議を続けると発表。打開策は見いだされていない模様で、米東部時間10日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)に予定通り発動される見通しだ。中国は報復を予告しており、制裁関税の応酬で、世界経済に悪影響が広がる可能性がある。
引き上げの対象は、2千億ドル(約22兆円)分の5700品目以上で、日用雑貨や農産物、家具などの一般の消費財を幅広く含む。昨年9月に発動した税率10%を25%まで引き上げる。
協議は米通商代表部(USTR)で9日夕、ライトハイザー米通商代表とムニューシン財務長官が中国の劉鶴(リウホー)副首相を迎えて始まった。ホワイトハウスの声明によると、ライトハイザー氏らはトランプ大統領に協議内容を報告したという。
トランプ氏は9日、協議に先立ち、ホワイトハウスで記者団に「何が起こるかわからない。すごい1日になるぞ」と話した。8日夜には、習近平(シーチンピン)国家主席から「美しい手紙」を受け取ったといい、「(習氏と)たぶん電話でも話すことになるだろう」と述べた。
中国と今週中に合意する可能性を問われると「あるかもしれない」と否定はしない一方、まだ追加関税をかけていない「3250億ドル(約36兆円)」分の輸入品についても、「第4弾」として発動する準備を進めている、と牽制(けんせい)した。
中国国営新華社通信によると、劉氏はワシントン到着後、メディアに対し、「目下の特殊な状況のもと、理性を持ち、誠実に米国側と意見を交換したい。追加関税は問題を解決する方法ではなく、中米双方にも、世界にも不利益だと考える」と述べた。
追加関税の「第3弾」をめぐっては当初、関税の上乗せ幅を第1~2弾より低い10%で発動。今年1月に25%に引き上げる予定だったが、昨年末の米中首脳会談を経て、協議の進展を見るとして延期されていた。
今月1日までの北京での協議が不調に終わった後の5日、トランプ氏はツイッターで突然、10日の引き上げを予告。USTRが8日に官報で、実務を担う米税関・国境警備局も9日に発動を通知していた。
ただ、米国の輸入時に即座に新たな関税率が適用された前回までと異なり、今回は10日以降に中国から輸出された商品が対象となった。大半の商品は海路で運ばれるため、実際に追加関税が適用されるまで2~4週間程度はかかる。この「猶予期間」に歩み寄りの余地を探る可能性もある。(ワシントン=青山直篤、北京=福田直之)