労使協定で定めた上限を超える長時間労働をさせていたなどとして、日本テレビ子会社のアニメ制作会社マッドハウス(東京)が、新宿労働基準監督署から是正勧告を受けたことがわかった。労基署に申告した社員の男性らが17日、記者会見して明らかにした。勧告は4月17日付。
アニメ業界、働き方は「インパール作戦」 パワハラも
マッドハウスは、アニメ映画「サマーウォーズ」「時をかける少女」、テレビアニメ「ちはやふる」などのヒット作で知られる。
男性が個人加盟する労働組合によると、同社は忙しいときでも残業時間を月60時間とする労使協定を結んでいたが、労基署は男性が月100時間以上の残業をしていたと認定した。一定の時間外労働を想定した「固定残業代」を払っていたが、実際の労働時間はこれを超え、未払い残業代があったことも認めた。
固定残業代は、事前に決めた時間分の残業代をまとめて支払うものだが、その時間を超過して働いた場合に、会社側は追加の残業代を支払わなければならない。
労組によると、男性の総労働時間は月393時間に及ぶこともあった。テレビアニメ制作に必要な人員や素材の管理や、外部への原画の発注・回収などを一手に引き受け、過労で帰宅時に倒れ、救急搬送されたこともあったという。男性は会見で「毎年社員を使いつぶして、アニメを作っていたのだと痛感した」と語った。男性は一人に多くの業務が集中する今の働き方を変えることも会社側に申し入れたが、拒否されたという。
マッドハウスは朝日新聞の取材に、「本件に関しては労働基準監督署からすでに指摘を受けており、その指摘に従って適正に対処する。(男性とは)誠実に向き合って話し合いを続けている」とコメントした。
同社は1972年設立。2014年に日テレが株式の95%を取得して筆頭株主になった。(榊原謙)