東京六大学野球春季リーグ戦は19日、明大が慶大との首位対決に連勝し、5季ぶりの優勝へ王手をかけた。試合を決めたのは先発した右腕・竹田祐(2年、履正社)の満塁本塁打。2017年の選抜大会決勝で、大阪桐蔭高に敗れたものの準優勝した履正社高の元エースが、投げても5回1失点で勝利投手となった。
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スタンドから驚き交じりの歓声や悲鳴が上がる一打が飛び出したのは二回裏だった。2死一、三塁で8番打者が四球を選び、9番の竹田に打順が回ってくる。内角直球を振り抜いた一打は左翼席へ。「とりあえず来た球を振ろう。打って点が入ってくれたらいいな、と」。そんな思いから生まれた「木のバットでは初めて」の本塁打は、リーグ史上99本目の満塁弾として東京六大学の歴史に残る。
明大入学後、1年間は悔しい思いを重ねてきた。昨秋の慶大戦は1回戦で先発を託され、5回無失点と好投したが、後続が打たれて逆転負け。打線の援護がなく好投が報われない試合が続き、リーグ3位の防御率(2・25)を残しながら1勝もできなかった。
「(DH制を採用していない)東京六大学では投手も打てたら戦力になれるから」と今季は野手陣の打撃練習にも加わり、バットを振る回数を増やしてきた。履正社高1年時は遊撃手で「バッティングはもともと好き」。明大での日々のトレーニングや食事を増やしたことで、体重は4キロ増の86キロに。今季ここまで投手で3勝、打者でも5打数3安打と好調なのは、パワーアップの成果でもあるようだ。
19日の慶大戦で明大が放った安打は竹田の満塁弾を含め、二回の3本だけ。対する慶大は10本。善波達也監督は「竹田で勝てた」と投打のヒーローをたたえる一方で、「竹田しか野球をやってなかった。内容で負け、でもなぜか試合には勝てた。もっとしっかりやってもらわないと」と、先輩選手らに苦言を呈した。
敗れた慶大の捕手で主将の郡司裕也(4年、仙台育英)は「(竹田の)本塁打は交通事故のようなもの。でもあれがすべてだった。悔しいのひとこと」と無念さをにじませた。(杉山圭子)