高校野球の春季和歌山県大会は12日、紀三井寺球場で決勝があり、智弁和歌山が市和歌山に8―7(延長十回)でサヨナラ勝ちし、近畿地区大会への出場権を手にした。
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野球は九回2死から――。格言通りの同点劇が、智弁和歌山の意地から生まれた。
5―7で迎えた九回、2死と追い込まれたが、智弁の中軸はぶれなかった。4番徳丸天晴(1年)が強振した打球は、中堅右のフェンスを直撃するランニング本塁打に。5番の東妻純平(3年)も続く。白球がバックスクリーンにまっすぐ伸びていった。「絶対に負けてはいけない相手」と東妻。延長十回、無死満塁から細川凌平(2年)が中前サヨナラ打を放ち、決着をつけた。
宿敵対決だった。昨年の春から和歌山の決勝は4季連続でこのカード。紀三井寺球場のスタンドを智弁のチームカラーの「赤」と市和歌山の「緑」に分けて、接戦を繰り広げてきた。
いずれも智弁が勝ったが、簡単な試合は一つもない。18年春は6―5、夏は7―6でサヨナラ勝ち。秋は最大6点差をひっくり返して9―6だった。主将の黒川史陽(3年)の気合がすごい。「昨日、仲間に『負けたら、100メートルダッシュ100本やるぞ』と言って、重圧をかけてきた。和歌山では絶対負けたくないので」
一方、念願の勝利を目前に敗れた市和歌山。捕手で主将の米田航輝(3年)は「ちょっと甘くなっただけでも智弁は逃さない。1球の大切さを学びました」。市和歌山の3年生は入学してから公式戦で5度、智弁と戦って、全敗。ともに出場した今春の選抜大会は同じ8強だったが、この一戦で改めて思い知った。「(智弁は)夏に甲子園にいくためには絶対に勝たないといけない壁」。半田真一監督は「うちの弱さ、甘さが出た。もう少しの差、と思わずにやっていきたい」と語った。
5度目の対戦があるのか――。今年の和歌山の夏は、いつもよりもアツくなりそうだ。(小俣勇貴)