施設の老朽化や来館者の減少で苦境に立つ美術館や博物館が、インターネットを使って有志からの出資を募るクラウドファンディング(CF)に挑戦する例が増えている。3月には国立6美術館が合同で専用サイトを立ち上げた。理解を得て成功する例が多いが、PR不足などから失敗に終わることも。パトロンの輪は広がるのか。
ダイエー副社長を務めた故・大川栄二が私費を投じてつくった大川美術館(群馬県桐生市)では12月8日まで、所蔵品の中核をなす松本竣介(1912~48)の生前のアトリエを再現して展示している。愛用したイーゼルやパレットを置き、代表作とともに楽しんでもらう試みだ。費用を捻出しようと、昨年6月から2カ月間、500万円を目標にCFに挑み、約750万円が集まった。開館30年を迎えた美術館の魅力を地元で訴えて歩いた田中淳館長(63)は「アトリエの再現で来場者も増え、年間の入場者数は前年を上回る見込みだ」と喜ぶ。
かつて天皇皇后両陛下(今の上皇ご夫妻)も訪れた美術館だが、近年の来館者は全盛期の3分の1ほどに落ち込み、開館30周年を記念した企画の費用を自前で捻出することができなかった。「CFに挑戦していることをチラシやウェブでアピールするなど、必死で取り組んだ。地元を中心に幅広くアート愛に着火できたことが大きい」
■国立科学博物館、プロジェクト…