安倍政権は日ロ平和条約について6月の大筋合意を断念した。北方領土に関する歴史認識や安全保障問題をめぐり、両国の主張の隔たりが埋まらなかった。ロシアのプーチン大統領が来日して6月29日に行う予定の日ロ首脳会談では北方四島での共同経済活動などの進展をめざす。日ロ両政府は条約交渉を続けるが、長期化は必至だ。
安倍晋三首相は昨年11月、プーチン氏と1956年の日ソ共同宣言を基礎に条約交渉を加速させることで合意。北方四島の帰属を解決し、条約を締結するのが基本方針だが、日ソ共同宣言で条約締結後の引き渡しを明記した歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島の「事実上2島」に絞って返還交渉に臨んだ。大幅譲歩を示すことで解決をはかり、6月のプーチン氏来日時に大筋合意する算段を描いてきた。日本国内では解決に向けた期待感が高まり、政権内には夏の参院選で成果をアピールできるという見方もあった。
ところが、今年1月から始まった交渉でロシアは、第2次世界大戦の結果として北方領土が正当にロシア領になったと認めるよう要求。「日本固有の領土」としてきた日本には受け入れられない主張だった。さらに北方領土返還後に米軍が基地を置く可能性や、日本が米国から導入する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」への懸念をロシアは繰り返し表明。ロシアにとって日米同盟が安全保障上の脅威になるとした。
河野太郎外相と来日中のラブロフ外相は31日、東京で第4回の締結交渉を行ったが、平行線に終わった。
河野氏は会談後の共同記者発表…