客が過度のクレームなどの迷惑行為で、対応する従業員を心身ともに追い詰める「カスタマーハラスメント」(カスハラ)が広がっている。スイスで10日から開かれている国際労働機関(ILO)の総会では、客や取引先などからのハラスメントも対象に新しい条約の議論が進む。「お客様は神様」は変わるのか。
大阪府内のハンバーガーチェーン店で働く20代の女性は、常連の中年男性の振る舞いを「カスハラ」と考えている。毎回聞き取れないほどの早口で注文をし、少しでもまごつくと「聞き取れよ」「おちょくってんのか」と怒鳴り散らす。「本当に怖いです」と女性は言う。
カスハラが注目されたきっかけは、流通や小売りなどの労組を束ねる日本最大の産業別労組「UAゼンセン」が2017~18年、組合員を対象に2回にわたって実施したアンケートだった。回答した約8万人のうち7割が、「客から迷惑行為を受けた」と答えた。
回答内容を分析した関西大学社会学部の池内裕美(ひろみ)教授(消費者心理学)は「迷惑行為が近年増えているという回答が4割以上あった。状況は深刻だ」と話す。小売りや外食、サービス業など客と接する機会が多い職場を中心に、カスハラという言葉も徐々に浸透してきた。
高圧的な客が目立つようになったのはなぜか。
「消費者の立場を強める施策の…