25日の衆院本会議で内閣不信任案が否決された直後、首相官邸に戻った安倍晋三首相は、麻生太郎副総理と約25分間、2人だけで会談して衆参同日選を見送る判断を伝えた。
麻生氏は、この春から永田町に吹き荒れた「解散風」をあおった同日選論者の筆頭格。2カ月前、平成最後の日となった4月30日夜、東京・富ケ谷にある首相の私邸を訪ねて、こう進言した。「解散するなら今、同日選しかないでしょう。勝てるのはわかっておられるでしょう」
10月の消費増税は予定通り実施、米中貿易摩擦の激化もあって今後は景気後退への懸念が強い。同月には天皇陛下の即位の礼、年明けは通常国会、夏は東京五輪と日程は目白押しで、再来年9月末の首相の自民党総裁任期切れまでの間に衆院を解散しやすい時期は限られる。その中で、自民党が勝てるタイミングはどこか。新元号「令和」が好感され、内閣支持率は一定水準を保ち、野党の足並みもそろわない今夏こそが「最適」だという主張だ。
だが、首相は同意しなかった。「大義をどうするかという問題がありますね」。消費増税を予定通り実施する考えは変わらず、ロシアとの北方領土交渉は停滞。国民に信を問う中身がない。解散風はやまなかったが、それから2カ月、首相は「大義」をつくろうとはしなかった。
■「解散風」あおっ…