東京電力福島第一原発事故を巡る賠償金詐取事件で、詐欺罪で起訴された主犯格の男の公判が27日、福島地裁であった。男は「東電社員(当時)に賠償金の申請書の作成や送付を依頼した」と供述した。福島県警はこの社員の事件への関与も慎重に調べている。
男は、同県郡山市の「東洋健康センター」元社長で韓国籍の金孝尚被告(62)。原発事故の影響で売り上げが減ったなどと偽り、東電から計8億5900万円をだまし取った疑いで計8回逮捕され、七つの事件で起訴されている。
検察側の冒頭陳述によると金被告は賠償金を申請する際、別の賠償金詐取事件で実刑判決が確定した受刑者(60)に手伝ってもらったとされる。金被告は27日の罪状認否で「だまし取る考えはなかった」と否認。賠償金の申請に関し「受刑者と東電にいる彼の友達に頼んだ」と供述した。
この東電社員については受刑者の共犯の男も2016年1月、東京地裁の公判で、「申請手法の指導を受け、報酬を支払った」と供述していた。捜査関係者によると、社員はこの詐欺事件で書類送検されたが、不起訴となった。ただ、金を受け取ったなどとして、東電を解雇されたという。
東電広報は「公判中のため、コメントは差し控える」としている。(小手川太朗)