「原発事故がなければ患者たちは助かった」――。東京電力福島第一原発事故をめぐる刑事裁判で18日、入院患者らが事故後に死亡した双葉病院(福島県大熊町)の元看護副部長が東京地裁に出廷し、こう証言した。元副部長は法廷で、避難すらままならなかった、事故直後の過酷な状況を詳細に語った。
双葉病院は第一原発から約4・5キロの場所にあり、近くにあった系列の老人介護施設「ドーヴィル双葉」と合わせて計44人が、避難中の車内や搬送先の施設などで亡くなっている。元副部長は、これらの患者を死なせたとして業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の第26回公判で証言台に立った。
証言によると、多くの患者が震災発生直後、病院に取り残され、長時間、必要な治療が受けられなかった。寝たきり患者も多く、搬送できる車両の調達が難しかったという。数日後、バスの中や避難先の体育館で患者たちが亡くなっているのを目の当たりにした元副部長は「何もしてあげられなかった。原発事故がなければ治療できた」と語った。
この日は、同病院の医師や、救助にたずさわった自衛官、福島県の職員らから検察官が聞き取った供述調書も読み上げられた。放射線の影響などで車が足止めされたり、患者を受け入れられる病院や施設が見つからなかったりして、避難がたびたび中断した様子が明らかにされた。(杉浦幹治)