マレーシア政府は28日、麻薬の少量の所持や使用を非犯罪化する方針を明らかにした。保健省は「麻薬依存症は個人の意思の問題ではなく病気だ」との声明を発表し、麻薬常習者には刑罰ではなく治療が必要だとの考えを示した。
マレーシアはこれまで麻薬に対して最も厳しい対応をとってきた国の一つだ。40グラム以上のコカインや15グラム以上のヘロインなどの麻薬の所持や使用には最高で死刑。少量の麻薬の所持や使用についても無期懲役などの厳罰を科してきた。
全国の刑務所の収容者のうち6割近くは麻薬犯罪がらみで、ほとんどが依存症の者だ。麻薬犯罪者の収容により、年間5億リンギ(約130億円)の税金が支出されているとされる。
ズルキフリ保健相は麻薬の使用には貧困や家庭環境などの問題が関係しているとした上で、「人道的にも財政的にも非犯罪化の道が望ましい」と説明。新方針は麻薬自体を合法化するものではなく、麻薬の売買に対する刑罰は残すとしている。(シンガポール=守真弓)