コンビニ大手のファミリーマートとセブン―イレブンが7月1日、スマートフォンを使った独自のバーコード決済に乗り出す。支払いの利便性向上とともに、顧客の詳しい購買データを得ることをねらう。スマホ決済はすでに乱立気味で、競争がさらに激しくなる。
購買データの取得も狙う
ファミマが始めるのは「ファミペイ」。客はスマホアプリに電話番号や性別を登録し、主にレジで現金をチャージする。買うときには、スマホ画面にバーコードを表示して従業員がスキャンする。200円ごとに1円分を「ボーナス」として還元し、公共料金の支払いなど「収納代行」では1件につき10円分がつく。
11月以降はTポイントやdポイント、楽天スーパーポイントも併せてたまるようにする。銀行口座からのチャージもできるようにするほか、利用店もファミマ以外にも広げるという。27日に都内で記者会見した沢田貴司社長は「我々の仕事は、お客様に対する利便性が第一だ。利便性を追求していくとともに、加盟店のオペレーションの負荷も減らしていく」と述べた。
セブン―イレブンは、全2万店超でバーコード決済「セブンペイ」を導入する。レジやセブン銀行のATMからチャージし、使うと自社の電子マネー「nanaco(ナナコ)」のポイントがたまる。今後、イトーヨーカ堂なども含めてグループ内外で使えるようにする方針だ。運営会社セブン・ペイの奥田裕康取締役は「利便性が向上すれば集客につながる。流通業界から参入する安心感も強みになる」と話す。
両社が期待するのは、利便性向上やキャッシュレス決済の普及とともに、購買データの取得だ。どんな人がいつ、何を買ったかを把握することで、新たな商品の開発や、狙いを定めた販売促進策も打てる。ファミマは今後、ポイントで連携する3社とのデータの相互利用や位置情報の取得も検討していくという。
大手2社に対し、ローソンは今のところ、独自のペイの導入には慎重な姿勢だ。熊谷智・金融・デジタル事業本部長は「バーコード決済が一時のブームなのかを見極めたい」と話す。ローソンには共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」があり、「利用者の購買動向も10年弱でかなりのデータの蓄積がある」という。
バーコードやQRコード決済をめぐっては、LINEペイやソフトバンクとヤフーが出資するPayPay(ペイペイ)が先行。「100億円還元キャンペーン」などと銘打って各社は一気に利用者の囲い込みを図り、コンビニでの利用も広がっている。
乱立状態の中で、コンビニ独自のペイは勝ち残るのか。ファミマの沢田社長は「キャンペーンに併せて他のペイを使ってもらうのは全然かまわない。我々はそれに勝るようなキャンペーンをして、みなさんと健全な競争をしたい」と話した。7月から来年2月末までに総額88億円をかけ、無料クーポンの配布や期間限定でチャージ金額の15%、最大3千円分を還元するなどする。(土居新平)