4日に公示された参院選では、年金などの「2千万円」不足問題や消費税といった暮らしに直結するテーマだけでなく、6年半を超える長期政権となった安倍政権のありようも問われる。与党は「政治の安定」を掲げるのに対し、野党は政治に緊張感を取り戻そうと訴える。
「安倍政権支持」の空気
【特集】与野党激突、参院選めぐる発言集
【2019参院選・特設ページ】
曇天の福島市。自民党総裁の安倍晋三首相は、果樹園で桃とサクランボをほおばった後、桃の木を背に声を張り上げる。
「あの時代に逆戻りするわけにはいかない。与党でしっかりと力を合わせて、政治の安定を確保していきたい」。「あの時代」とは、2007年に参院選で惨敗して退陣、その2年後に誕生した民主党政権時代を指す。
首相は今回、12年の政権奪還から6年余りで築いた「安定」を演説の中心に据える。公明党の山口那津男代表も神戸市での第一声で「日本の政治の安定のためには連立政権に公明党がなくてはならない」とアピール。自民党の甘利明選対委員長は津市で「世界中が日本の総理の動向を一喜一憂して見ている。戦後最大のプレゼンスを、我々は持っている」と訴えた。
ただ、「1強」とすら言われる「安定」の内側では、数々の問題が指摘されてきた。首相は第2次安倍内閣発足以来、国政選挙での連勝をテコに官邸主導を強め、内閣人事局を通じて霞が関を掌握。官僚による忖度(そんたく)が蔓延(まんえん)し、森友問題で財務省による公文書改ざんなどの不祥事を招いた。政府へのチェック機能を果たすはずの国会でも、圧倒的な数を誇る与党に野党が押し切られる場面が目立つ。
老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の審議会報告書をめぐっては、諮問した麻生太郎金融相が受け取りを拒否。国会のルールに基づく野党の委員会開催要求は、「報告書そのものがなくなった」(森山裕・自民党国会対策委員長)と封印された。
首相や麻生氏が4日の第一声で…