日本で働くムスリム(イスラム教徒)が増えています。宗教上の決まりや慣習がどのようなものか、よく知られていないため、職場で戸惑うことも少なくなさそうです。日本企業に勤め、断食月「ラマダン」(今年は5月5日の日没から約1カ月間)を過ごしたムスリムの例を紹介し、仕事をしやすい環境にする方法を考えます。(吉田貴司、松川希実)
ラマダンの夕食会が壁破る
コニカミノルタ社員のサロモフ・アブロルさん(35)は、ウズベキスタン出身のムスリムだ。母国で日本語を学び2006年に来日、11年4月に入社した。同社の生産本部調達センターで、国内外で使用する資材の調達戦略を立案している。
今年のラマダンのさなかに、サロモフさんはあるイベントを企画した。
ラマダンでは日中に断食した後、日没後に「イフタール」という夕食会を開く。親戚や仲間と絆を深め合うためだが、このイフタールを会社で催して日本人の社員や家族を招き、ムスリムへの理解を深めてもらおうと考えた。
入社当時、ムスリムはまだ珍しかった。社員寮の食事がイスラムの戒律に従ったハラル料理でなく、入寮できないと本社の管理部門に相談すると「それはあなたの都合でしょ」。同僚の日本人社員に豚肉を食べられないことを伝えると「豚肉じゃないと思って食べればいいじゃん」と言われたこともあった。
ショックだったが、ムスリムであることを特別視されるのも嫌だった。だんだんムスリムの社員も増えてきた。サロモフさんは「理解は勝手には深まらない。バックグラウンドを自ら伝えよう」と考えるようになった。
会社に相談すると、食費などの…