布の上に描く、果物や植物が詰まったバスケット。茎や葉脈は直線的に、ビーズを通した糸をかぎ針を使って刺繡(ししゅう)していく。より柔らかな線を表現するために、葉の中は針に糸を通して手縫いで刺繡を施す。スパンコールや羽根やリボンも駆使する。
200年ほど前に考案され、オートクチュールの発展とともに培われてきたフランスの伝統刺繡の作品だ。
特徴的なのは、かぎ針を駆使するリュネビル刺繡。木枠で固定した薄いシルク布に、かぎ針を上から刺し、下で糸をひっかけ、半転させて上に抜く。機械のように正確に素早く糸やビーズがぬいつけられ、模様が表現されていく。
「シャネルやディオールといったオートクチュールのドレスやスカーフなどを飾ってきた刺繡の技です」。岐阜市で刺繡教室を開く所純子さん(47)が教えてくれた。
三重県出身。アパレル会社員だった29歳の時、友人が持ってきてくれた雑誌の切り抜きでパリの名門刺繡工房の作品に魅了され渡仏を決意。2002年、「ボンジュール」しか話せないまま刺繡の世界に飛び込んだ。
工房の教室にはフランス人や米…