ブラシの上に小さな人形を置くと、稲刈りの光景に(作品名は「田舎ぶらし」)――。日常品を別なモノに見立て、小さな世界を作り出すミニチュア写真家、田中達也さん(37)の作品展が、山口県周南市の市美術博物館で開催中だ。
田中さんは熊本生まれで、鹿児島在住。ブロッコリーを木に見立てるなど、食品や食品サンプル、文房具などと、1・5センチ前後の人形を組み合わせて作品を作る。2011年から毎日、インターネット上で作品を発表。インスタグラムのフォロワー数は190万人超という。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(17年)のオープニング映像にも使われた。
今回、ミニチュア作品や写真など135点を展示。作品にはだじゃれ風のタイトルも多く付けられ、クスッと笑わせる。新幹線の車体がパンの「新パン線」は、模型の線路上を実際に走る。今回の作品展向けの特別作品「今“ふぐ”に救助します」は、ふぐ刺しを海に見立てた。
ホチキスの針は、ニューヨークの摩天楼や図書館の本棚に。ボルトとナットは、遊園地の絶叫マシンに、というように着眼点がおもしろい。
5月25日にあったギャラリートークで、展示作品について田中さんは「ネットで発表した中から厳選したベストアルバムみたいな感じ」と紹介。「『新パン線』は、九州新幹線(の車体)がコッペパンに似ているから思いついた」「周囲にはパンと相性のよい、洋食向けの食器を置いている。似たジャンル、相性のよいもので景色をつくることがポイントです」と語った。
アイデアを思いつくきっかけは「風景からモノを思いつく場合と、逆に、ジーパンを見て海に見えるとか、モノをみて風景を導く場合とがあります」。
写真の撮り方のコツは、「低く撮るとよくわからない。モノがわかりやすい角度から撮るのがよい。モノと見立てとの、どっちにも見えるように撮ることを意識するとよいです」。
田中さんは「ビールを飲んだり、食器を洗ったりする時に泡と人形を組み合わせるとか、考えるだけでもおもしろくなる。ぜひ日常の中で思考してほしい」と話している。
「MINIATURE LIFE展」は7月7日まで。月曜休館。作品は写真撮影できる。(小西孝司)