(15日、高校野球大阪大会 大阪桐蔭7―3東淀川)
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1点をリードされて迎えた七回、昨夏の全国王者・大阪桐蔭が仕掛けたヒットエンドランが適時打になった。この回、3失点。なのに、東淀川のベンチは盛り上がった。「大阪桐蔭が真剣に1点を取りに来ている」。最高の手応えだった。
「日本一のチームに、どれだけ自分たちの野球ができるか」。東淀川の選手たちは、それだけを考えていた。
犬山亮監督が、6月21日の抽選会を思い返す。「あいつ、半泣きでした」。「あいつ」とは、大阪桐蔭との初戦を引きあてた主将・竹村幸四朗(3年)だ。すかさず声をかけた。「泣くのは違うぞ。そんな気持ちで、自分たちの野球が出来ない方がもったいない」
監督が東淀川に赴任したのは、2017年春。一緒に入学してきたのが、いまの3年生だ。赴任当時の野球部は「部員が先生にため口をきくし、態度もよくなかった」。部のテーマを「誠実な姿」に決め、そんな雰囲気をともに変えてきた。
モットー通り、相手がいくら強豪だろうと自分たちの野球に誠実でいようと決めた。マウンドに立ったエース清水葵(3年)は割り切っていた。「打たれて元々」。直球の球速は、「130キロも出ないくらい」。力で抑えられないと分かっていた。だから、外角だけを狙って右腕を振った。「外角を打ち損じれば、長打にはならない。四球で崩れることだけはやめよう」
これがはまった。大阪桐蔭打線は外角を気持ちよく振り切れず、フライを打ち上げた。深く下がった外野の網に飛球がひっかかった。六回までは被安打6。4失点で粘り、接戦に持ち込めた。打線も相手エースに16三振を喫したが、8安打で3得点。140キロ台の直球に臆さず、振り切った。
試合には3―7で敗れたが、犬山監督は晴れやかな表情だった。「できすぎです。最高の相手に九回までいいゲームができた。いいチームに成長しました」。清水の表情も暗くない。「ちょっとでも爪痕を残せればと。自分のピッチングはできたので、悔いはないです」。東淀川の短くも熱い夏が終わった。(小俣勇貴)