(15日、高校野球大阪大会 大阪桐蔭7―3東淀川)
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昨夏の全国覇者、大阪桐蔭は初戦の序盤、“らしさ”を出せずにいた。
東淀川に一回、いきなり1点を先行された。二回までに3点を奪って一度は逆転したものの、攻撃が波に乗れない。計9アウトのうち、七つがとらえきれなかったフライによるものだった。四回、3―3の同点に追いつかれた。
花園球場は立ち見客で埋まっていた。勝って当たり前――。そんな雰囲気が、スイングを硬くしたのか。ファーストストライクから強振できなかった。ベンチから主将の中野波来(はる)(3年)が、何度も叫んだ。「仕掛けていこう」。分かっていても体が動かないのが、夏の初戦の難しさだ。
空気が変わったのは、1点リードの七回。1点を奪ってなお1死一、二塁で「より攻撃的にいくために」と西谷浩一監督がヒットエンドランのサインを出した。6番石井雄也(3年)が、左前適時打で応えた。この回、4連打で3得点し、突き放した。
7―3で試合を終えた後、西谷監督は言った。「夏の大会は毎試合、相手も必死でくる。楽なゲームなんてひとつもない」。そして、こう付け加えた。「どこまで粘り強くできるか。粘れなくなった時点で終わり」
大阪桐蔭が大事にする“粘り”の意味は、耐えることだけではない。うまくいかない状況を打開するのも含まれる。昨夏の北大阪大会準決勝、履正社を相手に1点を追う九回2死走者なしから逆転勝ち。そこから全国の頂点まで駆け上がった。そんな先輩たちをベンチで見てきた中野は言う。「もっと振って、もっと思い切り投げて、自分たちから仕掛けていかないと」
「粘り強さ」は、引き継がれているのか。試される夏は、始まったばかりだ。(小俣勇貴)