9月20日開幕のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会を控えた日本代表では現在、最終登録メンバー31人の枠を42人が争っている。ケガによる欠員に備えて複数のポジションをこなせる選手が多い中、ジェイミー・ジョセフHCはFWとバックスをつなぐSHを「専門職」と位置づける。それだけにポジション内での争いは厳しい。
ラグビーワールドカップ2019
従来、本大会のSHのメンバーは2人。ふるいにかける6~7月の宮崎合宿では34歳の田中史朗(キヤノン)、26歳の流大(サントリー)、28歳の茂野海人(トヨタ自動車)の3人が参加している。
田中は過去2度のW杯を経験し、日本人で初めて南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」でプレーした第一人者だ。流は帝京大、サントリーと名門で主将を務めたリーダーシップが持ち味。突破力を武器にする茂野は今季、スーパーラグビーのサンウルブズでも活躍した。高レベルでの争いだが、3人によればギスギスした雰囲気はないという。「決めるのは上なので」と茂野は語る。
宮崎合宿での試合形式練習で先発メンバー組に入ったのは茂野。しかし合間のキック練習でその相手を流を務め、体をぶつけ合うフィジカルトレーニングでは田中と茂野が組むなど、3人の距離は近い。
流によると、ライバルであり同士なのだという。「3人によるミーティングで意見し合っていますよ」。食堂で毎日20分程度話し合い、グループLINEも作ってコミュニケーションを密にしている。コーチからのアドバイスを共有したり、防御時の決まり事ができていなければ指摘し合ったりしている。
「誰が出ても日本代表のSHとして変わらず力を出さなければならない」と3人は口をそろえる。そして最年長の田中はこうも言った。「ライバルを蹴落としてでも試合に出ようとするのは学生時代までの話。ここは『ジャパン』なので」。それが代表選手のプライドだと言い切る。(有田憲一)