ラグビーワールドカップ(W杯)を控える日本代表がITを駆使し、数値の「見える化」で日々の特訓にアクセントを加えている。
選手たちは宮崎での合宿最終第3クール(17日まで)を過ごす。選手の上空を飛ぶのが、練習を撮影するドローンだ。日本代表にドローンが採用されたのは、前回のワールドカップ(W杯)に向けて強化していた2015年4月のこと。エディ・ジョーンズ前ヘッドコーチがフランスからの情報をもとに採用した。横、縦方向からのビデオ撮影だけだったものに、ドローンの「鳥の目」の広い範囲の撮影が可能になったことは画期的だった。
今では活用方法が進歩した。17年からは撮影した映像をパソコン端末に取り込めるようにし、数秒後にはグラウンドでのチェックが可能になった。恩恵を預かっているのがFW。スクラムやラインアウトなど8人の呼吸を合わせる動作のチェックに欠かせない。プロップの稲垣は「すぐフィードバックでき、修正をかけられる。イメージと映像が違うシーンが多々あるので、非常に助かっている」と語る。
FWは3~4組に分けて練習することが多く、練習と映像チェックを順番に回せることで練習の効率アップにもなっている。WTBの福岡も「相手の後ろの攻めるスペースを意識しないといけないが、俯瞰(ふかん)できる」と効用を語る。
またGPSも昨秋、最新版を導入。GPSを練習着の内側に装着し、心拍数をリアルタイムで把握できるほか、衝突回数、跳躍回数などさまざまなデータを十数項目にわたって収集している。
その日の練習の成果は数値で「見える化」されている。たとえば15人対15人の試合形式の練習。各選手のタックル成功率やボールキャリーの回数などを、分析スタッフが映像で調べ、夕食前後には食堂に張り出される。「ライバル選手との比較がさらされるわけです。細かいデータが出ている以上、ごまかしが利かない」と稲垣。合宿はW杯出場枠の31人を争うだけに、同じポジションの選手の数値が刺激を与える。
この「見える化」のひとつで、チームが試合の指標にしているのが「ボールインプレータイム」というもの。試合時間80分のうち、両チームでボールを保持して攻めあう「実稼働時間」のことで、この合宿でも40分以上を意識して取り組んでいる。40分が強度の高い試合の目安となる。
日本代表分析スタッフの浜野俊平さんによると、日本のW杯での相手、スコットランドとアイルランドが戦った試合では44分。日本が18年6月に完勝したイタリアとの第1戦が41~42分で最長。今春、代表候補チーム「ウルフパック」対ハリケーンズB戦は25分と低調で、内容も大味な試合だった。
日本はスピーディーさとフィットネスで敵を振り回すことをめざしており、練習も試合の強度に匹敵した設定にしている。8日の実戦形式の練習では40分で7千メートルの走行距離を記録し、リーチ主将は「今日のしんどさにはびびった」と振り返ったほどだった。
浜野さんは試合の分析だけでなく、日々の練習の映像をチェックし、全選手のプレー内容を分析ソフトに入力し、掲示する。「選手もコーチも数値で頑張りを見ている。選手同士も数値をもとにコミュニケーションを取っているし、賢くなっていると思います」。ITが日本代表強化を下支えしている。(能田英二)