大相撲九州場所5日目の17日、朝青龍が雅山を楽につり上げ、初日から一人5連勝。北勝力を一気に寄り切った琴欧州と、千代大海、琴光喜、玉乃島ら8人が1敗で追う。魁皇は玉乃島の鋭い出足に残す腰なく2敗目。玉飛鳥が左すねを骨折し、休場した。
【マイク集】
●十文字 突き起こしたかったけど距離が合わなかった。(連勝は)たまたま勝ってただけ。
●琴ノ若 (3勝2敗)自分としてはまずまず。(元幕内の五城楼が引退し)飲みに行くのもけがをするのも一緒だった。寂しい。
●豪風 (張って出た立ち合いに)裏目どころじゃない。今までどんな体勢でも負けなかった。それが、変な自信になっていた。
○安馬 昨日の悔しさを晴らした。はたかれて足が見えたから、(その足を)つかむしかなかった。
●雅山 (横綱相手に)調子がいいからどのぐらい出来るかなと思ったが。(相手は)全部強いパターンだから、何に絞っていいか。元気が出ないね、今日は。
○千代大海 うまく決まった。相手の腕が見えて、左からポンといなした。今日の相撲はいい感じですね。
○高見盛 思い切り当たっていこうと、それだけ。がっちり入っていい相撲だった。(張り手は)くらくらきたけど。
○琴欧州 (4勝目)自分の立ち合いが出来て勝った。硬さが取れた? どうかな。(よくなったのは)体の動き。
○玉乃島 (魁皇を降し)気付いたら終わっていたという感じ。集中していた? しっかり取れました。前日、腰を打って夜は寝返りが出来なかった。休場も考えたが、土俵に上がるだけ上がろうと。
◇内に潜んでいた闘志に自分でも驚く…白鵬
琴光喜の顔面に何発もの張り手を浴びせる。「初めてですよ。こういうのもあるんですねえ」。白鵬は、内に潜んでいた闘志に自分でも驚いた。
伏線は先場所にあった。琴光喜には、立ち合いの変化で連勝を6で止められた。「まさか続けては来ないでしょ」と、この日の朝の白鵬。「いい立ち合いをしたい」と体ごとぶつけるけいこを繰り返して場所に臨んだ。
ところが琴光喜は左に変化。ぐらついて「カーッと来たね」と白鵬。まず左、右と一発ずつ。右を入れたが、きらわれると、さらに交互に張った。「もう止まらないよ」。琴光喜が土俵に、はうまで10発を数えた。
「あー、何してるんだか」と白鵬が反省する荒い相撲。だが、これこそ「小手先だけでごまかす年寄りみたいな相撲じゃなく、負けてもいいから若い相撲を取れ」と厳しい、育ての熊ケ谷親方(元前頭竹葉山)が望んでいた姿だ。
8勝止まりで大関取りを逃した今年春場所以降、勢いを失った。名古屋では左足首ねんざで途中休場。今は足袋とテーピングで固め「痛みはないけど意識しちゃう」と、もやもやは晴れない。この初日には朝青龍相手に立ち合いで変わり、熊ケ谷親方にしかられた。
「興奮した。気持ちよかった。きょうでふっ切れたよ」と白鵬。この一番を「けんかみたい」と言った琴欧州との対戦は、まだ残っている。琴欧州より2歳下・20歳の「元大関候補」の意地を見たい。【上鵜瀬浄】
○…カド番の魁皇がいいところなく2敗目。立ち合いで組み止められ、上体を起こされて、あっさりと寄り切られた。「立ち合いが良くなかった。高いし、真っすぐに出れなかった」。先場所休場の原因となった右太ももに不安が残り、だましだましの土俵。けいこ場ではしきりに太ももをさするなど、本調子にはほど遠い状態だ。それでも敗因を体調の悪さに求める質問に「それはない」ときっぱり。まだ3勝2敗と何とか白星は先行している。これからが踏ん張りどころだ。
○…朝青龍は得意の雅山を、がっぷり組んでからいつもの速い寄りで一気に崩し、豪快につり上げて料理。「取り口は分かっていたので、とにかく離れない相撲を取った。自分の体勢になると楽しみだね。(つり上げは)相手もいやだろうけど、真剣勝負だから関係ない」と戦法を楽しんでいるかのよう。ただ一人の連勝を問われても「あ、そう」の一言。他の力士は眼中にないとでも言いたげな、圧倒的な強さだった。
○…垣添が旭天鵬のまげをつかんで反則負け。垣添は立ち合い直後、はたき込もうと旭天鵬の頭に右手をかけると、勢い余ってまげを“ギュッ”。そのまま腹ばいになった旭天鵬は「すぐ分かった」と振り返ったが、行司は気付かず垣添に勝ち名乗り。旭天鵬はしょんぼりと支度部屋に帰ろうとしたが、ビデオ室からの指摘で判明。差し違えで軍配が上がった旭天鵬は「勝負で負けたのなら納得いくけど、こういうので負けたら帰って泣くよ」と安ど。一方の垣添はムスッと無言のまま。
まげをつかんでの反則負けは03年九州場所の朝赤龍以来。押尾川審判部長は「我々はどうしても足を見るからね。今日のような日はビデオはありがたいよね」と感謝した。