大相撲九州場所11日目の23日、朝青龍は玉乃島に攻め込まれて冷や汗も逆襲の寄り倒しで11戦全勝。今年の勝利は歴代2位タイの81勝目。千代大海は琴光喜をはたき込んだが、十文字が敗れ2敗は1人に。琴欧州は黒海を寄り切って勝ち越し。魁皇も勝って8度目のカド番を脱出した。
◇大関取りへ2けた勝利目指す
大関取りに向け、星を落とせない琴欧州。その執念が「手」に表れた。
馬力のある黒海の突っ張りを頭を上げずにこらえた。その時、黒海の脇が開いた。
ここで驚くべき体勢になる。黒海の右前みつの部分に、両手をそろえるようにまわしを引いたのだ。こうなると右手首が逆に曲がって負担をかける。風呂上りの支度部屋。琴欧州はその仕草をしながら、角界独特の言葉を引き合いに出し「こんなになって、やまい(病)きそう(けがをしそう)になった」。
しかし、まわしをつかめば、左右ともに100キロを超える握力がものを言う。黒海を引き付けながら、取ったまわしの位置を徐々に調え、いつの間にか自分の右手を黒海の左前みつにがっちり。最後は、玉乃島に逆転負けした前日の反省から「勝負が決まるまで、力を抜かなかった」と言って笑った。
「関係ない」と琴欧州が言うように、勝ち越しは通過点だ。「これから落ち着いて10番を目指せる」と話す2けた勝利が目標だ。ただ相手は横綱、大関3人と白鵬の4人と手ごわい。
まさにギリギリの状況で役力士に挑む。この日は、首から下げている報道陣の身分証明書の写真を見て、冗談を言う余裕もあった。取組後「今の相撲を取れば10番勝てる」と言った師匠・佐渡ケ嶽親方。「頑張る、頑張るしかない」と笑顔で語った琴欧州。重圧をはねのけて、期待に応えられるか。【上鵜瀬浄】
毎日新聞 2005年11月23日 18時52分 (最終更新時間 11月23日 21時52分)