大相撲九州場所10日目の22日、朝青龍は横綱初挑戦の安馬を問題にしない取り口で降し10戦全勝。今年1年の勝利が歴代3位タイの80勝目。琴欧州は玉乃島の逆転のすくい投げに敗れ手痛い3敗目。琴光喜も連敗し2敗は千代大海と平幕の十文字の2人だけ。魁皇はカド番脱出にあと1勝となった。
【ひと言集】
●琴光喜 (7連勝中の魁皇に屈し3敗目) 立った瞬間、上体が浮いちゃった。合口のよさは関係ない。
○垣添 (連敗を8で止め)8連敗は初めてだった。長かった。
○高見盛 (にらみ合った旭鷲山を制し)平和主義だけど、売られたら買ってやる。返さないと精神的に負けちゃう。相撲は真剣勝負なんです。
○十文字 (平幕唯一の2敗)もう番付が落ちないので勝負にこだわらずいける。2けた? 考えない。
○栃乃花 (16場所ぶりの入幕で7勝目)こんなに早く、ここまで勝てると場所前は思っていなかった。白星が一つ増えるごとに、気持ちが楽になる。
○白鵬 (速攻で快勝し7勝目)気持ちいい。あと1番勝って気を楽にしたい。
○魁皇 (カド番脱出にめども)今場所一番よかったんじゃないか。
○玉乃島 (土俵際の逆転)負けたと思ったけど、何かやってやろうと捨て身だった。白鵬は琴欧州に先に大関に上がられたくないんだろう。土俵下から、勝ってくれと視線を送ってきたよ。
◇強すぎる!…初顔の安馬を軽々と担ぎ上げ
区切りの今年80勝目は「横綱と、それ以外」の力の差を象徴する一番だった。
相手は初顔の安馬。立ち合い、瞬時に左を差し、右四つ。まわしを切ろうと、くるくる回る安馬を追い回して2回転。後ろに回り込んで両まわしを取ると、幕内最軽量の113キロを軽々と抱え上げ俵の向こうへ、よいしょとばかりに降ろした。
「ずいぶん高く、持ち上げた」と問われ「宇宙まで飛ばすか?」。「後ろにも放り投げれた?」には「その前におれが転んじゃうよ」と余裕たっぷり。手玉に取られた安馬は「もう、やさしく投げてください、って感じでした。まだ横綱と対戦する体でないということです」と苦笑い。「いつもは仕切りの時に相手をにらみつけるんだけど、横綱の目は見られなかった。まわしばかり見ていた」
安馬の師匠、安治川親方(元横綱・旭富士)が取組前に解説した。「勝ち目? ないねえ。立ち合いのスピードも違うし、体も違う。もっと下半身の踏ん張りを強化しないと。十番も取れば足の親指の所に穴が開くぐらいにならなければ、かなわない。横綱が取った後の土俵には穴が開いてるもんだよ」
80勝は名横綱の仲間入り。あと2勝で北の湖の記録に並び、3勝で更新する。だが横綱は記録を意識しない。「あっ、そうという感じだよ」。さらりと「それが一番いいんですよ。持ってる力を出せば、結果はついてくる」。憎いほど強くて、冷静だ。【藤野智成】
○…琴欧州が痛い3敗目。土俵際まで寄り立てながら、玉乃島の苦し紛れの左すくい投げに裏返し。支度部屋でも機嫌が悪く、風呂場の入り口で、こちらも負けて顔をゆがめる稀勢の里と肩が触れ、相手の背中をにらみつけたほどだ。「勝ったと思って、ちょっと力を抜いちゃった」と悔やむ琴欧州。「勝ち越しを意識したか」の問いには「関係ない」。残り5日間で白鵬や横綱・大関戦を残す。平幕に落とした三つの星が響いてきそうだ。
○…千代大海が19歳の若手を退けて2敗を守り勝ち越し。初顔の稀勢の里はけいこ場でも顔を合わせたことのない相手。「思ってたより強かったので苦戦した。若くてここまで上がってくるだけある」と健闘をたたえたが、余裕たっぷり。勝ち越しには「どんな相手でも受ける気持ちはない。挑む気持ちのあるのがいいのだろう」とご満悦だった。
毎日新聞 2005年11月22日 19時40分 (最終更新時間 11月22日 23時30分)