大相撲九州場所8日目は20日、福岡国際センターで行われ、朝青龍は先場所苦杯した普天王を問題にせずただ1人8戦全勝。琴光喜も玉乃島をはたき込んで1敗を守った。大関はそろって勝ち、魁皇は通算勝ち星794勝となって貴乃花と並ぶ歴代9位。また幕内勝ち星626勝となり寺尾と並ぶ歴代10位タイ。大関を狙う琴欧州も白星で6勝目。
【マイク集】
○十文字 (幕尻で2敗キープ)あと2番勝たないと、(十両に)落ちちゃうんで。いつもは気持ちだけで体がついていかないけど、今場所は体が動いてます。
○隆乃若 (水入り後の白星で、ようやく初日)水入りは初めてですが、水入り前の体勢を作るのは難しいですね。ごちゃごちゃやりましたよ。
○安美錦 (土俵際で大逆手)どっちも差されちゃったから、残ろうと思って、回したら、うまくいった。大逆手? どんな技か知らないけど。
○旭天鵬 対戦成績はおれの方が勝ってるからよ、余裕があったよ。(9日目は横綱戦)期待しない方がいいよ。
●白鵬 (連勝は5止まり)帰りたくない。もう1回取り直したい。
●豊ノ島 (水入りの末負け)2、3番取ったような気がする。
●高見盛 (大逆手の珍手で敗れ)そんな技、知らない。
○出島 (連敗脱出)こんな長いの初めて。ホッとしました。
○琴光喜 (1敗を堅持)たたいたけど納得できる相撲。体が動いている。
○…千代大海が会心の相撲で白鵬を降した。4連敗と苦手にしている相手。突き押しも白鵬に手繰られたりかわされたりしたが引かずに我慢。ひたすら前に出ると白鵬もたまらず横向きに。「いやー疲れた。地元の声援がありがたかった」と千代大海。「けいこしていないからばたばた」というが、支度部屋に駆けつけた地元・ソフトバンクの松中信彦選手の祝福にいつまでも笑いが止まらなかった。
○…朝青龍が先場所、初日に敗れた普天王を外掛けで背から落とし、無敗を維持。「今度は負けるもんか、と思ったよ。いい流れで相撲を取れたね」とご満悦。8戦全勝での給金直しは、3場所ぶり14度目。琴欧州を星二つ差で追う立場だった先場所とは一転、全く危なげなし。「相撲は負けて覚えていくもんだね。1番1番集中できてるよ」。7連覇の快挙に向け、笑顔で中日を折り返した。
○…ライバル稀勢の里に敗れ、荒れた前日から一転、万全の左四つで岩木山を寄り切った琴欧州は終始、笑顔。中日を6勝2敗で終えて、大関昇進の目安の2けた勝利まであと4勝。「まあ、大丈夫でしょ」と記者に問われると、しっかりうなずき、「不戦勝の分は(計算に入る)?」と星勘定を記者に問い直す余裕も。「あと7日」。気を引き締めて引き揚げた。
○…安美錦と高見盛の青森勢対決は、幕内初の珍手「大逆手(おおさかて)」で、業師安美錦が制した。相手の肩越しにつかんだ上手からひねるように投げる技で、01年に新しく制定された82手の一つ。十両以上では今年春場所、千代白鵬が朝乃若に決めただけ。絶好の双差しになって出た高見盛は「いい体勢だし、こっちは前に出ることしか考えてない」と逆転負けにふくれると、勝った安美錦は「土俵際で残ろうと思って上手を回したら、うまくいった」。珍手には、どちらも「どんな技か、知らない」。
◇「大関のとしての使命」ある魁皇
大関の座を守るため、日々奮闘する魁皇。03年初場所に引退した同期の大横綱・貴乃花に3年遅れで、通算勝ち星「794」に追いついた。
初日で琴欧州を破った垣添が相手。懐に飛び込む速さに警戒が必要だが、合口のよさから来る自信と落ち着きが、取り口に現れた。
立ち合いで左をこじ入れ、右で相手の左を絞り上げる。得意の形になった後は迷わず出た。自身「今のところ一番いい相撲」と喜ぶ内容だ。
88年春初土俵。貴乃花のほか若乃花、曙とともに土俵を踏んだ。11年前のちょうど九州場所。貴乃花が30連勝で横綱昇進を決めた時、魁皇は小結。大関に昇進した00年秋場所では、若乃花は既に引退、曙、貴乃花も盛りが過ぎていた。
しかし「オレはオレ」が口ぐせの大関。在位32場所中優勝4回、そのつど綱取りに失敗し、カド番も千代大海と並んでワーストタイの8回になる豪快な半面ポカもやる。今場所も、分のいい玉乃島や雅山戦で星を落とし、周囲をヤキモキさせている。
それでも見せる粘り腰。そこにファンはしびれる。福岡がご当地とあって、この日の館内には「がんばれ魁皇」の大横断幕。「大関でまだ取れていることに感謝している。応援に少しでも応えないといけない」と魁皇は言う。
この日は千代大海も元気な相撲で勝った。朝青龍の連覇や最多勝、琴欧州の大関取りばかりが取り上げられるこの場所。歩みは遅かったかもしれないが、魁皇には、まだ、存在感を示すべき「大関のとしての使命」がある。【上鵜瀬浄】