家庭のテレビに向けて、インターネットを使って映像を配信するサービスが広がり始めている。通常の地上波、衛星放送、CATVに続く「第4のテレビ」とも言われるもので、映画、スポーツ、音楽などが見たい時に見られる「ビデオ・オン・デマンド(VOD)」などの機能が特徴。契約数はまだ少ないが、映像などの高速通信に適したFTTH(家庭用光ファイバー回線)の伸びが本格化するなど、普及のための条件が整い始めた。
◆パソコンより高画質
映像のネット配信は大きく分けて、パソコン向けとテレビ向けがある。テレビはパソコンに比べて操作が簡単で気軽に見ることができ、大画面で画質も良い。テレビを、セットトップボックスと呼ばれる機器を通して光回線に接続すれば、リモコン操作で視聴できる。
テレビ向けサービスで先行したのは、BBケーブル(ソフトバンクグループ)の「BBTV」、KDDIの「光プラスTV」、NTT東日本子会社のぷららネットワークスによる「4th(フォース)メディア」。いずれも、「デマンド・ビデオ・オン(VOD)」と、多チャンネル放送の二つを提供している。ビデオの料金は1本100~500円程度だ。
◆相次ぎ新サービス
BBTVは、7月にサービスを提供する地域を全国に広げた。1000タイトルのビデオと34チャンネルの放送が定額(月3129円)で自由に見られるサービスも始めた。4thメディアは8月から、どのインターネット接続事業者(プロバイダー)と契約していても利用できるようにした。
また、今年3月には、伊藤忠商事、NTT西日本などの出資で「オンデマンドTV」が西日本でサービスを開始し、6月には東日本に拡大した。レンタルビデオ大手のゲオも6月、「ゲオ@チャンネル」を開始し、VODサービスに参入した。
これまでネット配信に及び腰だった放送局も、積極的になってきた。フジテレビジョンは7月、自社の番組をプロバイダー経由でテレビやパソコン向けに提供する「フジテレビオンデマンド」を始めた。
◆まだ黎明期
各事業者の契約数は万単位とみられ、「まだ黎明(れいめい)期」(KDDI)だ。しかし、サービスの拡大や新規参入が相次いでいるのは、FTTHの伸びで需要が見込めるようになったためだ。総務省によると、FTTHの6月末の契約数は全国で341万件と、1年前からほぼ倍増。ADSL(非対称デジタル加入者線)などを含むブロードバンド(高速大容量通信)全体では2000万件を超えた。
各事業者は「多チャンネルは衛星放送で、ビデオはレンタルで見るもの、というイメージがこれまであったが、ネット配信の認知度もしだいに上がってきた」(BBケーブル)と、「第4のテレビ」の普及に手応えを感じている。【位川一郎】
2005年9月9日