ベンチャー企業「ジャパンメディアネットワーク」(JMネット、東京都港区、破産)による「風説の流布」事件で、東京地検特捜部は3日、証券取引等監視委員会と合同で、同社の元幹部だった金融ブローカー、大場武生容疑者(46)の関連先の弁護士事務所など数カ所の家宅捜索を始めた。虚偽の事業計画を発表して親会社の株価をつり上げた証券取引法違反(風説の流布)の疑い。大場容疑者は先月中旬以降、所在不明となっており、特捜部は同容疑で全国に指名手配して行方を追っている。
関係者によると、JMネットは02年11月、携帯電話に専用のアダプターを付ければ、月額4500円で無制限の通話が可能になる「IP(インターネット・プロトコル)携帯電話」の事業計画を発表。その後、親会社で東証2部上場の建設会社「大盛工業」(葛飾区)の株価が2カ月間で30円台から110円前後に急騰した。大場容疑者はこの過程で、海外のタックスヘイブン(租税回避地)に設立した投資会社を通じ、大盛工業株を取得して高値で売り抜け、30億円前後の利益を得たとされる。
JMネットは「03年春~夏にサービス開始」と公表したが、事業計画は実現しないまま04年1月に破産宣告を受けた。JMネット元幹部らは特捜部や証券監視委の調べに「株価をつり上げるために虚偽計画を発表した」と認めており、特捜部などは「ゼネラルマネジャー」の肩書でJMネットを実質支配していた大場容疑者が不正を主導したとみている。