外国出身者の台頭著しい角界に、また生きのいい力士が1人加わる。先月末の九州場所番付編成会議で新十両を決めた鶴竜(かくりゅう)=井筒部屋=だ。相撲経験もなく、井筒親方(元関脇・逆鉾)が「床山(髪結い)さんと間違えた」ほどの細身だったが、日本相撲協会に入門の直訴状を出した熱意と、兄弟同時三役、逆鉾・寺尾の2親方の指導が実り、入門4年・20歳でモンゴル出身8人目の関取となった。【上鵜瀬浄】
「日本に何のつてもないし、スポーツの実績もない。でも日本に行きたくて手紙を出した」。鶴竜はウランバートルでの中学生のころを思い出し、そう語った。テレビに映る旭鷲山や旭天鵬の活躍に刺激された鶴竜は、大学教授である父の、日本語堪能な知人に翻訳を依頼して手紙を出し、それが井筒親方に渡った。
01年九州場所の入門当時は70キロにも満たなかったが「つらい世界と覚悟してきたのでホームシックはなかった」とひたむきな鶴竜。けいこ場にも恵まれた。井筒部屋は、弟で元関脇・寺尾の錣山部屋と合同けいこしており、細身の体で39歳まで関取を務めた「鉄人」錣山親方から突っ張り指導を受けた。昨年名古屋場所で三段目優勝。その翌々場所の九州では左手甲骨折にもめげずに勝ち越し後、6場所連続勝ち越して十両昇進を決めた。
今は185センチ、125キロまでに成長。「動く相撲を取りたい。理想は横綱」という鶴竜は、あと15キロ増で朝青龍とほぼ同体型になる。逆鉾の巻き替えと双差し、寺尾の突っ張りが身に付けば、攻防のある相撲が期待できる。井筒親方は「外国人でもいい相撲にはお客さんは拍手を送る。有能な鶴竜にはいろいろ覚えてほしい」と望んでいる。