大相撲春場所は12日目の22日、白鵬は難敵の琴光喜を万全の取り口で寄り切って1敗を守り単独首位。朝青龍も魁皇を難なく退け、豊真将を突き落とした平幕の栃煌山とともに2敗で追う展開。黒海と玉乃島が3敗。栃東は「高血圧で5日間の安静加療」で休場し、不戦勝の千代大海は7勝目。黒海に苦杯の琴欧洲も7勝のまま。魁皇は後のない7敗目。
◇冷静さと柔軟さ凝縮…白鵬
予想外の事態にも対応できる冷静さと柔軟さ。今場所の白鵬の強さが、琴光喜との一番に凝縮されていた。
立ち合いはほぼ互角だった。突き放して次の差し手。右の相四つだけに、琴光喜は当然のように右を差しに行く。しかし、一度前みつを狙いにいった白鵬の左が自然とその下に潜り込んだ。同時に右の上手も取った。
両者とも戸惑う左四つに。だが、そこからの心の動きは違った。「上手を取ったので、じっくり攻めようと思った」と冷静だった白鵬。一方の琴光喜は「どうしていいのか分からなかった」と動揺を隠せなかった。
琴光喜が本来の右四つを狙って巻き替えに来たところを、白鵬は逃さなかった。左のかいなを返し、琴光喜の脇の下に肩を潜り込ませた。上体を浮かせ、一気に前に出た。昨年秋、今年初場所と一方的に敗れた巧者に相撲を取らせなかった。
「今場所は目がずっと一点を見ている。初日に負けて気楽になったんじゃないか。自分の相撲をやればいいんだと。昔に戻っている」と指導する熊ケ谷親方(元前頭竹葉山)。前半に1敗したものの、調子を上げて初優勝した昨年夏場所にイメージを重ねている。
昨夏途中休場していた朝青龍とは14日目にぶつかる予定だ。ただ、白鵬自身は「自分の相撲を一つ一つ、3日間集中して」とあくまで淡々。明鏡止水の心境の先に、賜杯が待つ。【野上哲】
○…栃煌山が好調の豊真将を力強い相撲で破り、二けた勝利。立ち合いで左を差すや、ぐいぐいと前に出て、土俵際で右から豪快に突き落とした。「10番勝てるとは思わなかった。早く自分の形になれている。変なことを考えずに思い切りやれているから」と好調の理由を語った。2敗を堅持して、朝青龍、白鵬との優勝争いにただ一人平幕で割って入っている。「優勝争い? 全然考えていないです」。新入幕ならではの欲のなさで、どこまで勝ち進むか。
○…前日紛失騒ぎのあった十両・皇牙の弓取り用の化粧まわしが出てきた。付け人が、普段置いてある東ではなく、西の支度部屋で見つけた。皇牙は「誰かが間違って移動させたのでは。確認してほしいですよね」とぶ然。それでも、心配ごとは解消。取組では白星を挙げた。
毎日新聞 2007年3月22日 19時16分 (最終更新時間 3月22日 21時32分)