業績不振に苦しむ富士重工業はトヨタ自動車との新たな提携関係に入ることで、スバルブランド復活を目指す。しかし、提携による具体策は打ち出せず、富士重の戦略はまだ不透明だ。GMの株式放出への”緊急避難”的な色合いの強い今回の提携劇だが、どれだけ両社の相乗効果を引き出せるかが富士重の立て直しの成否を握る。
日産とルノーが提携した同年の99年、富士重はGMとの資本提携に踏み切った。それまで日産と「つかず離れず」の関係ながら、経営の重要な局面では日産から受託生産を請け負うなどの支援を受けた経緯のある富士重にとっては、一つの決断だった。
富士重は90年代にステーションワゴン「レガシィ」が大ヒットしたが、その後はコンパクトカー人気に押されて「レガシィ」の販売が伸び悩み。期待を寄せた提携効果については、「商品供給などの面では成果が出なかった」(竹中恭二社長)。03~04年にかけて発売した軽自動車「R1」「R2」も苦戦。「レガシィ一本足打法」とも呼ばれ、車種数が少ないだけにヒット車がないと経営は一気に苦境に陥る。今年1~8月の国内販売台数は前年同期比6.5%減の約17万台と落ち込んでいた。
これまでのトヨタと富士重の関係は、トヨタが開発した車載通信サービスを富士重のレガシィに搭載する程度で薄い。富士重はエンジンと電気モーターを併用して燃費を向上させるハイブリッド車を開発しているが、富士重は独自の「水平対向エンジン」を採用しており、日産自動車のようにトヨタからすんなり技術導入を受けるのは難しい。
当面両社は「生産や開発面での協力関係を深める」(富士重の竹中恭二社長)というが具体策はこれから。スバルブランド復活のためには、富士重の商品力向上が課題だ。富士重は自前の四輪駆動技術を生かした乗用車や軽自動車をそろえ、根強いファンも持つ。竹中社長は「水平対向エンジンによる走りの楽しさ、高い操縦安定性などはさらに磨いていきたい」と話し、トヨタグループの中でいかに独自性のある商品を出していけるかが生き残りのカギを握る。
一方、北米市場でGMと同様に苦戦を強いられている米フォードとマツダとの関係は強い。共同開発した戦略車「アクセラ」のヒットなどでマツダの経営は回復。05年3月期連結決算は最高益を更新し、フォードの収益にも貢献した。フォードが米国で発売した小型車もマツダの主導で開発が進んだ。このため、米2強の経営不振が他の国内メーカーに与える影響は「限定的」(外資系証券アナリスト)との見方もある。【山本明彦、工藤昭久】