ジャック・ドゥミ監督/フランス 材料(登場人物) (カトリーヌ・ドヌーヴ) (ジャン・マレー) (ジャック・ペラン) (デルフィーヌ・セイリグ) (ミシュリーヌ・プレール) <恋わずらいの王子様に、王女様は愛のケーキを焼きました。> ほぅ~~~~~~~~~~。 観終わった後、思わず長~いため息が出てしまいました。 ![]() 「ロバと王女」の1場面 美しい。若き日のカトリーヌ・ドヌーヴが! 超カラフルな映像、「月のドレス」「空のドレス」「太陽のドレス」をはじめとする、豪華絢爛なドレスの数々が! 本作はフレンチミュージカルの名匠ジャック・ドゥミの幻の一品。日本公開は1971年。ビデオ、DVD、テレビ公開未発表の希少性の高い作品だ。 監督の死後、デジタル処理を施されて美しい映像に甦った本作。監修したのは、妻で映画監督のアニエス・ヴァルダ。「シェルブールの雨傘」に次ぐ、デジタル修復による再公開となった。「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」と同じ、音楽ミシェル・ルグラン+主演カトリーヌ・ドヌーヴというメンバーで、大人だけでなく、子どもたちも楽しめる作品となっている。 原作は童話作家、「シンデレラ」のシャルル・ペローの、もう一つの王女様物語である「ロバと王女」。国王である実父のプロポーズ(!!)から逃れるため、ロバの皮をかぶってお城を出た王女。ある日、家畜の世話をしているところに王子が現れる。そして恋におちる……。メルヘンチックなだけでなく、どこかコミカルなジャック・ドゥミらしいテイストで、語られていく。 とにかく色使いの美しさったらない。絵本がめくられて、おとぎ話の世界にいざなわれる。 ![]() 「ロバと王女」の1場面 この時代のフランス映画はホントにいいですね。レトロ感がありながら、SFチックな演出も飛び出して驚かされます。「クラシカルとポップ音楽の融合」とでも申しましょうか。 顔に前衛アートのようなペイントを施した家来たちや、森で電話を使う妖精、カプセル型お棺が出てきたりなど、小道具類に到るまで遊び心があって、細かい見どころがたっぷり! まだ初々しさを残したドヌーヴが、フレンチロリータ声で歌う数々のナンバーが楽しく、特に王子のためにケーキを焼くシーンに、見ているこちらはウットリと魔法をかけられてしまう。 しかし、ただただメルヘンチックな映像が続くだけではない。「これはギャグか?」と思えるほど、お笑いシーンが満載なところが、本作の個性であり、最後まで飽きさせない要素だろう。 冒頭、いきなりロバが金貨をドサーーーッと生む場面で、お笑いの舞台のような始まりに、あ然としていると、美しい王女(ドヌーヴ)が弾くピアノにオウムが乗ってるし……。その美女がロバのかぶりもの(!)でウロウロするのだから、インパクト大だ。 王子役、ジャック・ペランは、今ではプロデューサーとしてもおなじみの人。「ニュー・シネマ・パラダイス」「コーラス」のグレーの髪のあの人だが、あんな衣装を着せられて、こういう役もやっていたのですな~。 ほかにも、コクトー映画でおなじみのジャン・マレーを始め、古きよきフランス映画の面々がそろって出演しているのもうれしい限り。今は亡くなったり、老いたりしている人たちが、若い姿でスクリーンの中で息づいている。映画の持つファンタジックな力に感涙ですね。[文・イラスト、上村恭子] (10月29日からBunkamuraル・シネマにて公開。後、全国順次公開) ☆プチ見どころ その1 ドヌーヴ姫とペラン王子のでんぐり返りに「!」。原っぱでゴロゴロ~、アハハハ~!……って……。 その2 王様が座っている白い動物の椅子が、地方の遊園地の乗り物みたい。 |
しあわせ映画レシピ:「ロバと王女」
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